移民と亡命希望者は、アデン湾を横断し、その後イエメンの密輸業者が彼らをフーシ武装勢力が支配するサアダ県に連れて行く。サアダ県はサウジ国境に位置している。フーシ軍は密輸業者と共に働き、彼らから金をむしり取るか、「出国料」を支払うまで「収容施設」で虐待を繰り返している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、国境警備隊だけでなく、国境地域には装甲車両なども目撃されたという。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、サウジ政府に対して国境警備隊の対応を調査し、責任者を追求すべきだと要求する一方、国連に独立した調査を求めている。
ところで、サウジの実質的指導者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は2018年10月、自身の改革路線を批判する反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏(59)をイスタンブールのサウジアラビア総領事館内でリヤドから派遣した特別キラー部隊によって殺害させ、遺体をバラバラにして、化学液で溶かし、残りを下水に流して処分させるという野蛮な殺人事件を犯し、国際的な評価を落としたことがある。
しかし、同皇太子はここにきて国のイメージをアップするためにスポーツの国際イベントを開催する一方、今月初めにウクライナ戦争の和平協議の国際会議を40カ国以上の参加国を招き開催するなど、腐心してきた。そのような時期だけに、ヒューマン・ライツ・ウオッチの報告書にサウジ側は神経をとがらせている。
なお、オーストリア国営放送(ORF)の中東特派員、カリム・エル・ゴハリ氏は21日、「サウジは国際人権団体のエチオピア難民大量殺害に関する報道を検閲し、拡散しないように抑えている」と報じていた。
ハードマン氏は、「サウジはプロのゴルフ、サッカークラブ、主要なエンターテインメントイベントを買収して国のイメージを改善するために数十億ドルを投資しているが、人道上の犯罪から注意をそらすことはできない」と強調している(「『カショギ氏殺人事件』1カ月の総括」2018年11月01日参考)。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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