私は、人工知能が相手の理解度を判断しつつ、わかりやすい説明にしていく診療現場が意外に早くやってくると思う。人工知能は医師国家試験に合格できる能力をすでに持っているので、さらに進化すれば、医師の記憶力や判断力に委ねる医療ではなくなると考えている。
かといって、人間が医療に重要なことは言を俟たない。この時代に、医師に求められる教育を考え直すことが急務だ。患者さんから症状を聞き取り、正確に症状を把握する能力は欠かせない。
あと何十年もすると、スタートレックのように体の外からスキャンするとすべてがわかる時代になる可能性は否定できないが、当分の間は、症状をちゃんと聞き取る、観察する、検査結果を読み取る能力が正しい診断につなげるために不可欠である。
そして、医療現場で最も重要なことが、相手を思いやる心だ。人間力を磨く、そんな医学教育が不可欠だ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?