
ARGENTINA, MILEI HACIA DOLARIZACIÓN. 21-08-2023.
アルゼンチンで10月22日の大統領選挙を控え、8月13日に実施された予備選挙で極右でリバタリアン(自由至上主義)のハビエル・ミレイ氏が当初の予測に反してトップの得票率30%を得た背景には以下のような理由があるからだ。
1944年以降、高いインフレから解放されたことがない国20世紀初頭の経済大国だったアルゼンチンが1944年から高いインフレで国家経済は衰退への道を辿っている。インフレ率は44年間の2桁、15年間の3桁。それに1989年は3,0780%、1990年は2,314%という4桁のインフレ率も経験している。
昨年2022年のインフレは94.8%、今年は136%が予測されている。アルゼンチンの通貨ペソは世界で最も悪質な通貨のひとつとされている。勿論、国民が通貨ペソに寄せる信頼はゼロ。市民ができる最高の投資は今日買えるものは今日買っておくということ。なぜなら明日には同じ品物が値上がりしている可能性があるからだ。
スーパーマーケットでは開店の時間が遅れることがよくある。なぜなら頻繁に値上がりする商品の値札を変更する必要があるからだ。市民は毎日の消費物価の値上げで毎月の家計出費額がわからない。また小売業者も生産業者もその材料の頻繁なる値上げで正確なコスト計算ができない。だから、販売で損出しないように価格を多めに見積もっている。それがまたインフレを煽ることに繋がっている。
慢性的に財政赤字を繰り返している国これまで政府では歳入が歳出を常に上回る状態が長年続いている。その赤字を紙幣ペソを刷って補填しているというのが常なる政府のやり方である。だから正に経済の教科書で説明している通り、高騰インフレを招く典型的なお手本をアルゼンチン政府がこれまでやって来たということだ。
財政緊縮を実施する意思は政府にはない。その政府というのは正義党である。正義党が戦後から長年政権を担って来た。これまで正義党以外の政党から出た大統領は僅か3人だけである。それと断続的に17年続いた軍事政権も発展を損なって来た。
アルゼンチンの政治は慢性的に汚職を繰り返して来ている。例えば、正義党のネストル・キルチネール氏そしてその妻クリスチーナ・フェルナンデス氏の両大統領が政権を担った2003年から2015年の間に公共事業という名目で10億ドル以上の金額を横領していたことが明らかになっている。
ネストル・キルチネール氏は既に故人となっているが、クリスチーナ・フェルナンデス氏には6年の禁固刑の判決が下されている。ところが、彼女は現在副大統領のポストに就いており、政治家の不逮捕特権を利用して少なくとも彼女の任期が切れる今年12月10日までは逮捕されることはない。そのあとも議員選挙に立候補するはずである。
それを正義党の議員は暗黙の内に了解して、彼女を政界から排斥させようとする動きは皆無。勿論、彼女自身がこの不正への責任を取って辞任する意向はまったくない。一方、彼女に纏わるこの汚職に絡んでいた人物は全員刑に服している。
公共部門における2022年度の汚職の世界ランキングによると、アルゼンチンは世界180カ国の中でランキング94位。同じランキングにブラジル、エチオピア、モロッコが位置している。日本は18位。最も汚職が少ないのはデンマーク。
上述したクリスチーナ・フェルナデス氏の最後の政権年度の2015年にはアルゼンチンは107位にランキングされた。
余談になるが、クリスチーナ・フェルナデス氏が大統領だった時にあるテレビ番組に出演した。司会者が彼女が身に着けている高級な服装を皮肉って貧困者にはそのような服は手にすることはできないといったような表現をした。すると彼女は「私に貧困者の服装をして出演するようにとあなたは言っているのですか?」と立腹したように答えた。
国家指導者が貧困層を卑下したような回答をする。そのような国が発展することはない。彼女の息子も国会議員となっている。世襲政治だ。何故か、キルチネール夫妻を支持するファンが今もいるのである。