イスラエルでは司法改革に反対する抗議活動が6カ月以上にわたり続いている。ネタニヤフ連立政権は7月末、最高裁の権限を制限する法律を承認した。この法律は議論を呼ぶ司法改革の一環だ。司法改革に批判的な国民は、政府の行動を「イスラエルの民主主義に対する脅威」と見なしている。最高裁は9月12日、同法律に対する請願を審議するが、最高裁がこの法律を破棄し、政府がそれを受け入れない場合、イスラエルは憲法危機に直面することになるわけだ。

イスラエルが建国されて今年で75周年を迎えた。同国はイラン、ハマス、ヒズボラなどテロ支援国家、イスラム過激派グループに取り囲まれている。それに対し、イスラエルは世界的な軍事力を有して優位に対抗しているが、司法改革で国内は分裂している。

世界的ベストセラー「サピエンス全史」の著者で、“現代の知の巨人”と呼ばれるイスラエルの歴史家、ユバル・ノア・ハラリ氏(Yuval Noah Harari)はネタニヤフ政権の司法改革には反対をこれまで表明してきた。以下はレックス・フリードマン氏のポッドキャストでハラリ氏が答えたものだ。

ハラリ氏はイスラエルの現状について、「問題が国家的、民族的なものだったら、妥協や譲歩は可能だったが、問題が信仰や宗教的な対立となれば、妥協が出来なくなる。例えば、イスラエルとパレスチナ問題は既に宗教的な対立になってきている。それだけに、解決が一層難しくなるのだ」と指摘した。同氏はまた、「政治指導者は公式には声明していないが、2国家解決案を既に放棄している。イスラエルの現実は大多数がユダヤ系の国民が支配し、全ての権限を有している。それに少数派のアラブ系でイスラエル国籍を有している人々だ。彼らは一定の権利を有してる。それ以外のアラブ系の住民は市民権はほとんどなく、人権も限定されている。要するに、現実のイスラエルは3つの階級に分かれている国家だ。現在のイスラエルの指導者たちはこの現実の3階級社会の促進を目指している」と説明している。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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