レクサスRX 価格/664万〜900万円 試乗記

ワクワクする電動感こそ、新たなエンターテインメントかもしれない
クラシックな運転の楽しみにおいて「エンジンの個性」が占める割合は大きかった。電動化時代を迎え、エンジン派がさまざまな「泣き言」を連ねるのは、その裏返しだといっていい。
けれどもエンジンを回す楽しみは、今後、たとえ内燃機関が生き延びることになったとしても(生き延びると思うのだが)、限定的なものになるに違いない。効率的になればなるほどエンジンそのもののフィールは無色透明に近づく。音も振動もすべてはエネルギーの無駄遣いでしかないからだ。
そう考えると、純エンジン(ガソリン/ディーゼル)とHEV、PHEV、場合によってはBEVまで、数種類のパワートレーンを同じクルマに用意する状況が普通となったいま、その中から固定観念にとらわれることなく「新時代の楽しみ方」を模索するのが、クルマ好きとしては前向きで、未来があると思う。
そのことがよくわかるモデルがある。レクサスRXだ(もちろんメカニズム的にはほぼ同じ内容となるクラウンでもいいのだが)。


RXのパワートレーンは3タイプ。うちハイブリッドの上位2タイプは4WDで、2.4リッターのガソリンターボ(350)のみ4WDの他にFFを選ぶこともできる。上位2タイプとは2.5リッターガソリン+ツインモーターPHEV+CVTの450h+と2.4リッターガソリンターボ+ツインモーターデュアルブーストHV+6ATの500hだ。
全般的なドライブフィールはクラウンより洗練されている。レクサスのほうが高価なのだから当然だろう。とくにシャシーのセットアップが上手くいっている。グランドワゴン的なクロスオーバーのクラウンより背が高いというのに、乗り心地も含めて上等に仕上がった。
ところが。残念ながらエンジンフィールには特別な輝きはない。官能性という面の磨き込みは、はなから行っていない印象だ。動力性能的には十分なレベルなものの、加速のサウンドやドライバーの体に伝わってくる鼓動は高級車としては物足りない。2.4リッターターボはもちろん、2.5リッターもダメなのだ。この最新モデルにおいてエンジンは、もはや黒子というべき存在に徹している。


そうなってくると、できるだけエンジンを掛けずに走ったほうが気持ちはいい。新しいスポーツ感覚を味わうことができる。そう考えると、ベストグレードは必然的にモーター出力が大きくリチウムイオン電池を積んだ450h+である。PHEVゆえ満充電で出発すればWLTCモードで86kmほどBEVとして走ってくれる。もちろん、新しい楽しみよりも昔ながらに元気よく走りたいときがある、というユーザーなら500hという選択もありだ。
両グレードで車両本体価格はさほど違わない(約30万円の差で500hのほうが高い)から悩みどころだ。とはいえ、電動化時代の端緒にあって、個人的には500h以上に、450h+に新しいスポーツ性を感じた。絶対的なパフォーマンス以上に、電動化による洗練が今後ますます重要になる気がする。クルマは再び、面白くなってきた。