真夏の暑い日にはキンキンに冷えたドリンクが飲みたくなるものです。
しかし一方で「夏に体温を下げるにはホットドリンクを飲むといい」と聞いたことはないでしょうか?
実際は英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)の薬理学者であるピーター・マクノートン(Peter McNaughton)氏は「直感に反するようですが、温かい飲み物を飲むと本当に体温が下がる」と説明します。
この逆張りのような意見にはあまり納得いかない人も多いでしょう。温かい飲み物を飲めば身体が温まるのは当たり前のことだからです。
この意見には当然、体温が下がるメカニズムが存在し、それはある条件を満たしていないと機能しません。
それを知らずに暑い日は温かい飲み物の方が良いらしいと考えることは非常に危険です。今回はこの温かい飲み物で体温が下がる原理と、実行する際の注意点について解説していきます。
なぜ暑い日にホットドリンクを飲むと体温が下がるのか?
私たちヒトはご存知のように「恒温動物」であり、外部の気温に関係なく、常に体温を一定に保つようなシステムを持っています。
例えば、寒い冬の日には筋肉を震わせることで熱を発生させ、夏の暑い日には汗をかくことで熱を逃がします。
うだるような暑さの中では、この発汗こそが体温低下に最も重要な働きをします。
皮膚に浮いた汗は自然や扇風機の風に当たることで蒸発が促され、体内の熱を効果的に外に逃してくれます。
逆に汗をかかないと熱がどんどん体内に溜まり、熱中症のリスクが高まってしまうのです。
それゆえ、真夏の太陽の下では発汗が私たちの命を握っているといっても過言ではありません。

そしてマクノートン氏は、ホットドリンクが発汗を促進するのに効果があると説明します。
ホットドリンクを飲むと最初は確かに体温を高めますが、これまでの研究で、温かい飲み物は体を冷やす必要があることを伝える「TRPV 1」という神経の受容体を活性化することが分かっているのです。
これにより発汗作用が促されて、体内の熱発散が引き起こされるといいます。
その効果はカナダ・オタワ大学(University of Ottawa)による2012年の研究で実証されました。
この実験では、9人の男性に扇風機で風を受けながらバイクマシンに75分間乗ってもらい、その後、1.6℃〜50℃の水を飲ませて、冷水・常温・温水に対する体の反応の違いを調べています。
その結果、温かい水を飲んだときに最も体内の熱損失量が高くなる、つまり体を冷やす効果が高まることが示されたのです。
冷水を飲んだ場合、一時的に体内の熱損失が生じますが、発汗が抑えられたため、常温の水を飲んだ場合より最終的な熱損失量はわずかに小さくなっています。
一方で温水を飲んだ場合、一時的に体温は上がるものの、発汗が促されたため、結局は常温の水を飲んだ場合よりも熱損失量がわずかに大きくなっていました。

よって「ホットドリンクを飲むと体温が下がる」は科学的に正しい見解となります。
「よし、じゃあ暑い日にもホットドリンクを飲もう!」と思った方、ちょっとお待ちください。
ここで必ずチェックしておきたいのは「湿度が高いか低いか」という点です。