かつて筆者ゆかりの会津で白虎隊士らは、今の中高生程度の若齢にも関わらず戦い、立派な辞世の句・歌を遺し自刃した。今の百寿者と同世代、筆者の親族含め戦場に散華した者たちも多くが辞世や遺言を遺したという。死生観を抱き死に立ち向かった人たちの志が、辛うじて我が国にはまだ遺っている。
そしてコロナ収束の中、広島で101歳のママが現役の喫茶店「コロナ」が閉店した、有終の美、見事な退き際と想う。そんな百寿者にこそ末永くお元気で過ごして欲しいと願う。
我が国の老人医療、年金、介護は世代間扶助、子孫世代に負担を先送りする「子孫にツケ払いリボ払い」だ。なのに少子化が止まらず労働人口、払い手が減っている。
超高齢化を支える介護職は既に30万人不足し、さらに不足すると予測されている。夜勤して手取り月20万足らずの薄給、生活できないと忌避されている。一方で持ち家かつ資産が何千万もあっても高齢者医療と介護保険サービスの自己負担は原則一割、他人子孫に面倒みてもらいツケをリボ払いさせて資産温存。若い人は働いても子供育てても搾り取られるだけ、だから結婚も出産育児もできない望まない若い人が増えている。それで百寿がめでたい、はずがない、ただの搾取ではないか。
痛みある老人医療年金改革が言われて久しい。健康保険組合は保険料の4割超を高齢者医療に「貢いでいる」ため財政悪化し次々解散している。
健康保険法は第一条に「疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする」とうたっている。長寿でも延命でもない「生活の安定」つまりは労働し生活自立できるための「健康を取り戻すため」の健康保険だ。
自立の回復が望めないなら、いたずらに盲目的延命を健康保険で為すことは止めるべき、給付制限すべきだ。金融資産があるなら、介護はそこからも支出させるべきだ。何も考えずに盲目的延命医療と介護で百寿者と予備軍を「増産」し、その結果若い世代が際限ない「年金と老人医療費と介護費の仕送り」で逼塞し結婚も出産も諦めるような世代間搾取は、制度として破綻している、もはや看過し座視すべきではない。
(橋本財団「Opinions」2023年6月20日記事より許可を得て転載します)
【参考文献】
100歳以上、初の9万人超え 52年連続増、女性88%―厚労省:時事ドットコム 100歳以上が初の9万人超、女性が9割占める…人口当たりの最多は島根が10年連続 : 読売新聞 100歳以上、初めて9万人超える 88%が女性、最高齢は115歳 | 毎日新聞 議論になる100歳のお祝いの銀杯 大和総研 百寿者から超百寿者研究へ- ヒト長寿科学のご紹介・研究 – 百歳研究の動向と課題 医療費、最高の44.2兆円 21年度、コロナも影響―厚労省:時事ドットコム 紙おむつから考える 増える消費、リサイクル急務:東京新聞 介護人材は2025年に32万人不足!要介護者600万人時代に「介護難民」にならない備え 「1日1500キロカロリー」は誰のため? 外科医だった私が「平穏死」を唱えたわけ 読売新聞 特養入居女性殺害、逮捕の介護職員「20分間くらい暴行」「気付けのつもりでポットのお湯かけた」 : 読売新聞 45歳の死、生きざまに反響 別れの動画再生200万回 緩和ケア医関本さんの言葉に「励まされた」 アントニオ猪木さん、死去10日前に“最期の言葉” 起床困難なほど衰弱した姿で激励に「この声が一番俺の敵なの」 「喫茶コロナ」惜しまれ閉店 広島の歓楽街で60年余り101歳の大ママ「お客さまに感謝」中国新聞デジタル 健康保険組合とは 解散や合併で減少傾向 ? 日本経済新聞提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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