才能とスキル次第で年収1000万円以上を稼ぐことも

 一般的な会社員と違って、アニメーターは職人やアーティストといった側面もある職業。誰でもアニメーターとして食べていけるわけではないのだろう。そのため、生計を立てられるだけ月間の描く枚数を増やせるかどうかは、アニメーターを生業にする最低限の才能があるかどうか、実質的なふるいに掛けられているようなものなのかもしれない。

 少し古い資料になるが、JAniCAがまとめた『アニメーション制作者実態調査報告書2019』に、アニメーターからプロデューサーまでアニメ業界のさまざまな役職の年間収入(2017年時)をまとめた調査データがある。これによると300万円以下が41.1%という結果。ちなみに200万円以下で見ると22.8%、100万円以下で見ると8.3%という結果になっている。

 一方で、300万円~500万円は27.5%で、500万円以上は30.5%。原画マンや演出、監督になると能力に応じて高い報酬を得ている人もたくさんおり、多くはないが年収1000万円を超える人も現れ始めているようだ。

 業界に入ったばかりの新人動画マンは、なかなか生計を立てていくのは難しいようだが、キャリアを積んでいけば、スキルに見合った報酬を得られ、高収入といわれるレベルの年収を得ることもできるとのこと。入江氏が業界入りした30年ほど前に比べると、動画マンの1枚の単価が上昇したり最低保証の報酬が出るようになったり、原画マンや演出、監督になると年収1000万円以上の高収入を得られるケースもあるなど、業界全体の収入事情は徐々に改善されてきているということだろう。しかし、これまでの労働環境や収入事情の悪さが一因となってか、アニメーターの成り手不足が深刻化しているという。

「30年前の肌感覚としては、動画マンの9割は国内の日本人で、残りの1割を海外に発注するという割合だったと記憶していますが、現在は日本人の動画マンの割合がどんどん減ってきており、海外に発注する割合のほうが多くなってしまっているのです。これはスケジュールの問題で、『海外に発注したほうが早いから』という状況が続いて国内の仕事が少なくなり、仕事がないから国内のキャパが縮小して、さらに海外に頼って……という負のスパイラルが20年続いた結果だと思います。

 そして、先ほどお伝えしたとおり、アニメーターは動画マンからスタートして、経験を積んだ後に原画マンにステップアップするというキャリア形成が一般的。ですが、日本人の動画マンが激減してしまっているということは、アニメ業界の将来を担う優秀な原画マンなどが国内から生まれにくくなっているということでもあります。このように未来の原画マンや演出、監督の担い手となりえる動画マンが減ってしまっているということは、日本のアニメ業界にとっていいことではありません」(同)

 もちろんアニメ業界もそんな由々しき事態に、指をくわえて見ているだけではなく、入江氏によると「国内の優秀な新人たちを確保して、動画マンから原画マンに育成できるように、新人が辞めなくてすむ環境を整えていく努力を始めた制作会社がこの数年で増えた」とのことだ。日本が世界に誇るアニメ産業が衰退していかないよう、優秀な作り手が育ってくれることを祈るばかりである。

(取材・文=恵美須/A4studio、協力=入江泰浩/日本アニメーター・演出協会代表理事)

提供元・Business Journal

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