「驚異の陳列室」を標榜し、写真集、画集や書籍をはじめ、5000点以上に及ぶ奇妙な骨董品を所蔵する大分県・別府の古書店「書肆ゲンシシャ」。

地方都市のいち古書店ながら、店主の藤井慎二氏が独特の選書眼でコレクションした本などを紹介するTwitterアカウントは12万フォロワーを誇り、今や全国から老若男女のサブカル好きが同店を訪れている。

本連載では、1時間1000円で店内の本を閲覧でき、気に入った本はその場で購入することもできる、「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇書・珍書の数々を紹介していきたい。

一家に一冊は持っておきたいオカルト事典

――今月は「超常現象・心霊写真」がテーマです。お盆の季節なので(笑)。

藤井:超常現象の定番本といったら、コリン ウィルソンの『世界不思議百科』(青土社)でしょう。今回は、同じくコリン・ウィルソンが監修した『超常現象の謎に挑む』(教育社)を紹介します。1992年に出版された書籍ですが、とにかくカラーの図版が多い。見開き4ページほどでさまざまな超常現象を簡潔に説明しています。それに、値段もそこまで高くないですね。

UFO、UMA、心霊写真を網羅したオカルト事典の数々! 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本
(画像=『世界不思議百科』(青土社)、『TOCANA』より引用)

――Amazonで見たところ、2000円くらいですね(2023年6月現在)。

藤井:500ページ近くあるのですが、UFO、幽霊、タロット、手相、ホロスコープ、錬金術、ヒューマノイド、妖精、空中浮揚などなど……。オカルティックなテーマを網羅的に紹介している事典としては、非常に価値があり、とてもオススメです。

――とりあえず、夏休みはこの1冊を読んでおけば大丈夫ということですね。

藤井:最近、入荷した『超常現象大事典―永久保存版』(成甲書房)もいいですね。交霊会に参加して心霊主義者になっていたコナン・ドイルの話から、サンタクロースやイエティの話まで載っています。「超常現象相互関係図(UFOを中心に)」「魔術結社の系譜」などの図表や、「世界の主なポルターガイスト現象」「世界の著名霊媒」「世界の湖底怪獣」「終末予言の系譜」のリストはわかりやすく、資料性が高い。『超常現象の謎に挑む』と比べると本書は高価ですが、事典として各家庭に1冊置いておくと良いでしょう。かなりマニアックな情報も載っており、調べやすいように索引もあります。

UFO、UMA、心霊写真を網羅したオカルト事典の数々! 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本
(画像=『超常現象大事典―永久保存版』(成甲書房)、『TOCANA』より引用)

――有名なネッシーの写真なども載っていますね。

藤井:『オカルト・クロニクル 奇妙な事件 奇妙な出来事 奇妙な人物』(二見書房)という書籍もオススメです。2022年に出た増補新装版は結構売れているらしいので、今でも書店で買えると思います。

――「クロニクル」ということは、事件がたくさん紹介されているということですか?

藤井:その通りです。ソ連領で9人が怪死した「ディアトロフ峠事件」、「セイラム魔女裁判」、岐阜県の「幽霊団地」騒動、「八丈島火葬場七体人骨事件」などなど……。界隈では有名な事件の数々が紹介されています。また、当時の新聞記事も豊富に載っているのですが、それもまた面白い。広島県比婆郡西城町に現れたUMA・ヒバゴンのページは笑えますよ。「諸説紛糾―『やっぱり、猿だろ!』」という箇所で、合コンの場で女性に「ヒバゴンって知ってる?」と聞いたところ、「そういうの言う人、なんかキモイ」と言われ、「なんだと! キモイのはお前だ! このメスヒバゴンめ!」と激高しそうになった話が披露されています。

UFO、UMA、心霊写真を網羅したオカルト事典の数々! 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本
(画像=『オカルト・クロニクル 奇妙な事件 奇妙な出来事 奇妙な人物』(二見書房)、『TOCANA』より引用)

――時代を感じさせますね。ところで、ヒバゴンとは何だったのでしょう? ニホンザル説、ゴリラ・オランウータン説、熊に違いない説……。

藤井:「未知の猿人説」「山の民説」「町の陰謀説」など、さまざまな説がありますね。