アルピナD4S 価格:1280万円 試乗記

4シリーズ・ベースのアルピナはグランクーペに設定
初代BMW4シリーズが登場したのは2013年のこと。クーペモデルを偶数で呼ぶのは、6シリーズや8シリーズの伝統に沿うもの。2ドアセダン的な処理だった3シリーズクーペとはまるでコンセプトが異なるスペシャルティとして誕生した。2代目となる最新4シリーズのシルエットは、もはや3シリーズというより8シリーズ似だ。もちろん足回りの寸法設計も3とは別で、性能はずっとスポーツ寄りだ。
となるとアルピナの4シリーズもスポーティなキャラクターであることは容易に想像がつく。なお4シリーズ・ベースのアルピナはグランクーペのみ、BMW・Mのクーペとカブリオレとは棲み分けた。


B4とD4のどちらを選ぶのか。3リッター直6ガソリン(495ps/730Nm)を積むB4のドライブフィールは、はっきりとM440の延長線上にあって、よりスポーツカー的なテイストだった。乗り込んだ直後からフロントアクスルの踏ん張りに驚くだろう。足元はアルピナの専用チューニングで、存在感たっぷり。ハンドルとダイレクトにつながっている感が強い。ライドコンフォートはアルピナならではのしっとりさを確保しつつ、スポーティなテイストも感じる。あえていうならB8グランクーペにも共通するドライブフィールだ。
M謹製のS58エンジンは相変わらず素晴らしい。普通にドライブする分には柔軟で扱いやすい性格でありつつ、ひとたび踏み込めば高回転域までストレスなく回り、ガソリンユニットならではの快感をダイレクトに味わえる。その気持ちよさは右足裏から脚、体を通過して脳へとストレートに届く。
ワインディングに入ると、街中では踏ん張り一辺倒だった前輪が、急に軽く頼もしく動き始める。高速道路でも「道をよく知っている」走り方、たとえば車線変更時にはドライバーの小さな意識の変化(=手元への微妙な入力)に素早く順応して走る。実にアルピナらしい完成度だ。


一方、D4Sグランクーペのほうはというと、これがもう全域でとろけそうになるくらいによかった。街乗りのコンフォートさは、まさに「アルピナ・マジック」。前輪の存在感もそこまで強くない。すべてにおいてしなやかに動いてくれる。街中中心のドライブはD4Sにまず軍配が上がる。そして何より3リッター直6ディーゼル(355ps/730Nm)のフィーリングがたまらない。吹き上がりの感触は、もはやディーゼルとは思えないほど滑らか。サウンドも心地よい。力強さがフラットにずっと続くのも魅力だ。BMW製の6気筒ディーゼルを3/4シリーズで楽しむには、日本ではアルピナを選ぶほかない。
速度が上がっていくにつれ、乗り味はどんどんよくなる。よりしなやかに、よりまろやかに。とくに高速クルージングは素晴らしい。まるで路面を滑空しているかのような心地よさだ。安定してクルーズし、それでいて前輪は実にしなやかに動く。最高のグランドツーリングカーである。D4Sほど東京から京都を近く感じるクルマはない。