「ワゴンもあ~る」と発売したら超大ヒットのスズキ ワゴンR
今では軽トールワゴンといえば軽自動車ブームの牽引役として知られており、さらに背の高い軽スーパーハイトワゴンが日本市場における自動車販売の主力となっていますが、初代スズキ ワゴンRが発売された1993年当時、もちろんそんな認識はありませんでした。
「トールワゴン」という用語も当時の筆者レベル(ハタチそこそこの、ちょっとクルマが好きになった程度の若者)では知りません。
1970年代のライフステップバンはホンダが軽乗用車から一時撤退したため短命に終わりましたし、1990年に三菱が発売した初代ミニカトッポは、スズキ アルトハッスル(1991年)や日産 ADバン/ワゴンMAXなど、フルゴネット車の一種だと思っていました(※)。
(※実際、ミニカトッポの前席天井は小物入れで、頭上スペース拡大効果は薄かった)
発売直前まで「ZIP」という車名だったスズキの新型軽乗用車も、後に人気は出たかもしれませんが、その車名だとおそらく当初は「アルト派生で変なクルマが出た」程度だったでしょう。
それが当時の流行だった「ワゴン」を名乗り、Revolutionary(画期的)やRelaxation(くつろぎ)を表しつつ、なんとなくスポーティな感じもする「R」を組み合わせた結果、軽でも新型ワゴンだって…と人目を引いた結果、その良さも認められて大ヒット!
最初はターボエンジンすら設定がなかったほど期待されていなかった新型車は、その名に「ワゴン」を冠したおかげで発売直後から大ヒットとなり、軽自動車だけでなく日本車を根底から変えていきました。
長いワゴンを切り落とすCM、マツダ ファミリアS-ワゴン
渋滞にハマって身動きできない、全長のなが~いステーションワゴン(※)の前にサムライが現れ、日本刀でその前後をスパン、スパーン!…短くなったワゴンはクルマの隙間を縫うようにスルスルと走り抜けてメデタシ…ファミリアS-ワゴンは、そんなCMでした。
(※当時から、これはアノ車をディスってるなと…)
そもそも初代はスタイリッシュなライトバンがウケてヒット作になったファミリアですが、1985年に発売、1989年以降はバンの5ナンバー版ビジネスワゴンとして1994年まで販売したのを最後にワゴンを廃止、経営状況の悪化で時代の波に乗る力はありません。
しかし7代目の派生車で、4ドアクーペ(5ドアハッチバック)のファミリアスティナは後継のランティスが車格アップで日本国内ではファミリア一族から外れ、1994年発売の8代目ファミリアには5ドアハッチバック自体がなく、売れ筋を完全に外しています。
そこで1998年、最後のマツダ製ファミリア(※)では3ドア廃止、5ドアハッチバックを復活させますが、なんとそこで「これをワゴンということにしよう」となりました。
(※ファミリアバンは日産 ADバンのOEMで存続、現在もトヨタ プロボックスOEMで健在)
初代インプレッサにならって、普通にスポーツワゴンでもなんでも名乗ってよかったと思いますが、ここでヒネリを加え、「あえてボディが短いショートワゴン、名付けてS-ワゴン!」と決定。
初代インプレッサスポーツワゴンが売れたことでもわかるように、当時のユーザーは「荷物を積める便利なクルマ」ではなく「ワゴンそのもの」を求めている状況でしたから、「短いワゴン?おおそうか軽快そうでいいな?」とヒットしました。
日産がRVブームに便乗し、5ドアハッチバック版に化粧してRVということにした「パルサーセリエ/ルキノハッチS-RV」(1996年)もそうでしたすが、その頃になると単にワゴンというだけではなく、どういうワゴンかで差別化して売り込んでいた時期です。
そういう意味では、「ワゴンを名乗るけど、本来あるべきワゴンの姿じゃないのがイイ!」という、なんだかよくわからない「ワゴン祭り」みたいな、妙な時代でした。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
【関連記事】
・【新車情報カレンダー 2021~2022年】新型車デビュー・フルモデルチェンジ予想&リーク&スクープ
・運転免許証で学科試験の点数がバレる?意外と知らない免許証の見方
・今一番危険な車両盗難手口・CANインベーダーとは?仕組みと対策方法
・SNSで話題になった”渋滞吸収車”とは?迷惑運転かと思いきや「上級者だ」と絶賛
・トヨタ 次期型ノア&ヴォクシーに関する最新リーク情報すべて