大阪府が2024年度から、私立高校の授業料を全面無償化する方針を決めた。これを私が批判したところ、橋下徹氏から次のような反論が来た。

彼はバウチャーの意味を取り違えているようだが、これは保護者に金券を配ることではない。実務的には府が学校に(親の人数分)払うが、公立学校の授業料と同じである必要もない。大事なのは、すべての保護者に公立も私立も一律の直接給付をすることである。

大阪府の高校はすべて「府立」になる

たとえば大阪の府立高校の授業料は年間11万8800円だが、国の就学支援金が全額支給されるので、保護者の負担はゼロだ。私立高校の場合は、就学支援金が39万6000円まで支給される。大阪府はそれに補助金を加え、60万円まで無償にしている(年収590万円以下の場合)。

日本経済新聞より

この所得制限をなくして完全に無償化するのが、吉村知事の案である。橋下氏は「金券配ってるのと実質同じなんだよ」というが、まったく違う。これはバウチャーではなく、大阪府が私立高校の授業料を決め、その教育内容にも介入する供給補助金である。

教育バウチャーは、フリードマンが1962年に『資本主義と自由』で提案した制度だが、いまだに導入している国がほとんどない。それは公立学校への補助金を(私立も含む)保護者への直接給付に変え、民営化して私立学校と競争させるからである。

ところが全面無償化すると、府が私立高校を全面的に支配することになる。授業料にも上限を設けるので教育サービスは制限され、競争がなくなり、府の政治介入を受ける。これは大阪の私立高校をすべて府立高校にするものだ。