(2)防潮堤を甘くみた報い、福島原発事故で全て台無し
オイルショック当時は、官僚が力を発揮できた時代で、通産省、資源エネルギー庁の活躍で、日本の省エネルギーの経済構造への転換に成功し、経済成長率が高まっていく時代でした。それがオイルショックからざっと40年後の2011年3月、福島第一原発の事故で全てが台無しになりました。
事故に至る過程には多くの原因が混ざりあっているでしょう。私は、防潮堤の高さを内部で指摘があった「最大の津波み備えて15.7メートル」にしておけば、こんな大惨事にならなかったと、信じています。押し寄せた津波の高さは14、15メートルでしたから、かろうじて全電源喪失、原子炉の冷却不能という事態を防げたに違いない。
東北電力の女川原発は海面から14.7メートルの高さに原発が建設されており、押し寄せた津波の高さは13メートルでしたから無事でした。昔から津波の被害が多かったので、その高さの高台に原発を建設するという常識を持っていたためです。それに対し、福島は高台を海抜10メートルまで削った場所に建設したうえ、防潮堤の高さも不十分、さらに非常用電源の備えに手抜かりがあった。

2007年の福島第一原子力発電所 Wikipediaより
現在、東京地裁で旧経営陣4人の「津波予見可能性」などを巡り、13兆円の損害賠償を命じた訴訟の控訴審が行われている。13兆円という非現実的な請求額は、原発事故原因の解明という本来の目的から論点をずらす効果しか持たない。
さらに「最大で15.7メートルの津波」という試算があり、それに従わなかったことについても、あれこれ解説がなされています。実際に14、15メートルの津波が押し寄せたのですから、「津波の予見可能性」ではなく、誰がなぜ防潮堤の増強を直視しなかったのかを関係者は明らかにすべきなのです。
東電経営陣ばかりでなく、政府側の責任も明らかにしなければならないのに、この問題では東電側ばかりが矢面に立っている。金融危機における金融行政の不透明さに対しても、金融機関側ばかりが責められ、行政当局の責任追及は極めて甘かった。それとよく似た構図です。