検察側が捜査を進めているのは、これらの資金が実際に彼の父親の選挙資金に使われたか否かということである。
8月3日、ニコラス・ペトロ氏は自分が受け取った資金の多くを彼自身が着服し、残りを父親の大統領選挙資金に充てたことを検察側に供述した。それを複数紙が明らかにした。(その一紙 8月3日付「ABC」から引用)。
昨年の大統領選で右派の対立候補だったセルヒオ・ファハルド氏はニコラス・ペトロ氏のこの供述によって与えたインパクトから、「政府は昏睡状態に陥っている」と表現した。
ベネズエラのマドゥロ大統領も選挙資金を提供していたところがペトロ大統領に纏わる問題はこれだけではない。べネズエラのマドゥロ大統領から提供された資金も昨年の大統領選挙選に使われたということが6月に明るみされた。その金額は1億5000万ペソ(525万円)。
それを明らかにしたのは大使のポストを解任させられた前ベネズエラ大使のアレハンドゥロ・ベネデティ氏だ。彼は大統領選挙選では参謀を務めた人物だった。(6月4日付「エクスペディエンテ」から引用)。彼がそれを暴露したのは、その恩を忘れたペトロ大統領から冷遇されたからであった。
マドゥロ大統領が期待していたのは、隣国コロンビアで彼の味方になってくれる大統領が誕生することを望んでいたからだ。ペトロ大統領はゲリラ組織M-19の元戦闘員だった人物で、この組織が解散となった後に政界入したのである。
実際、ペトロが大統領になってからベネズエラで暫定大統領として活動していたマドゥロ大統領の敵グアイドー氏へのコロンビア政府からの支持は全く消滅した。
ペトロ大統領の任期満了まで残りまだ3年あるペトロ氏は大統領に成る以前に首都ボゴターの市長そのあと上院議員を歴任した。彼は上院議員として政府を批判することは得意であった。ところが、彼が実際大統領になってからこれまで2回の内閣改造で10人の閣僚が解任された。しかも、彼が選挙で公約していた改革案についても、どれも法制化されていない。
また彼に連携していた左派と中道の政党は既に彼から離れた。現在のペトロ大統領はひとり孤立している状態だ。最近のDatexcoによる世論調査でも支持率は26%まで下がっている。(6月6日付「エル・パイス」から引用)。ペトロ大統領の政権運営能力はほぼゼロに等しい。
コロンビアではこれまで大統領が罷免されたことはない。30年程前にエルネスト・サンペール大統領が麻薬組織カリから政治資金を受け取っていたことが明かになりサンペール大統領が逮捕されるというスキャンダルが起きたこともあったが、彼が罷免されることはなかった。
ペトロ大統領に任期はまだ3年残っている。しかし、ペトロ大統領にこれまで味方していた中道並びに左派連合は彼から離反している。果たして彼が任期満了まで大統領のポストに就いていることができるか疑問である。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?