ワクチン推進派は、「コロナワクチン接種群の死亡率は未接種群(又はコントロール群)の死亡率より低いため、 ワクチンと接種後死亡には因果関係はない」と主張しています。厚労省の計算でも、接種群の死亡率の方が低いことが公表されています。アメリカやイギリスでも同様の報告がなされています。

「こびナビ」の木下氏が、この問題について、ネットメディアで解説しています。重要な部分を引用してみます。

「ワクチンを接種した人と、していない人で比べると、コロナ以外の原因による死亡はワクチン接種した人の方が圧倒的に少ないということが明らかになったんです。つまり、ワクチンの副反応による死亡が多いとは考えられません」

・・・中略・・・

「ワクチン接種者の死亡率は半分以下になっています。また、VSDの分析からはアジア人でも、ほかの人種でも、かかわりなく同様の結果が出ていることが明らかになっており、日本人だけ特別なことが起きているとは考えにくい」

・・・中略・・・

「ワクチン接種によって死亡リスクがあがるという因果関係は示されなかった」ことがはっきりと示されていることがわかる。

・・・中略・・・

死亡率、なぜ接種者のほうが低い?

・・・中略・・・

「接種者のほうが死亡率が低くなっている背景には、接種できる状況の人がもともと、健康な人が多いということがあるのではないかと推測できます。コロナワクチンを接種することで、ほかの病気になりにくくなるわけではありません」

全体の死亡率は、接種群ではコロナ感染死が減少するため、若干低下すると考えられます。 接種後死亡者が多い場合は、横ばい又は若干上昇する可能性があります。 特定の疾患の死亡率は、上昇か横ばいです。 上昇すればワクチンと死亡の因果関係ありとなり、横ばいであれば因果関係なしとなります。

ところが、現実には接種群の死亡率は、全体で半分以下とか、 特定の疾患で25分の1 とかに激減しています。 これに対して、木下氏は次のように説明しています。

接種群の死亡率が低いのは、「接種群の方が健康な人が多いため」と推測される。

この説明に、私は概ね同意します。 全身状態の悪い人にはワクチンを接種するべきではない とされていますので、 未接種群には全身状態の悪い人が多数含まれています。 したがって、接種群の死亡率が大きく低下するのは必然です。 コロナワクチンによりコロナ感染死は減少しますが、 それだけで全体の死亡率が半分以下になったりすることは有り得ません。

一方、この事実は、「健康な人の割合が異なる」あるいは「全身状態が悪い人の割合が異なる」 というバイアスが存在していることを示しています。バイアスが存在する場合は、それを補正する必要があります。

バイアスが存在する時は、それを補正せずに比較をしてはならない。

これは統計学の基本です。バイアスが補正できていないため、接種群の死亡率が極端に低くなったわけです。バイアス補正なしの比較は、科学的な立証とは言えません。皮肉な話ですが、木下氏の解説により、「因果関係を科学的に否定する根拠は何も示されていない」ということが、はっきりしたわけです。

医薬品等行政評価・監視委員会(第8回、2022年6月22日)の資料では、ワクチン接種のリスクの系統的な評価方法について、次のように記載されています。

自治体(市区町村)が保有するワクチン接種台帳の基本データを、同じ市区町村が保有する人口動態統計(死亡診断書)あるいは戸籍または住民基本台帳のデータと照らし合わせることにより、ワクチン接種者と非接種者における死亡に関する頻度を比較することが可能と考えられる。

バイアス補正をしない比較は科学的ではありません。また、この手法ではバイアス補正が極めて困難です。一方、私が再三主張している偶発性の検証では、住民基本台帳のデータにより死亡者を全員把握することが可能となり、その結果、報告バイアスは解消し、科学的な検証が可能となります。どちらの手法が優れているかは、火を見るよりも明らかです。

ワクチン推進派は、事あるごとに、データを科学的に読み取る重要性を強調してきました。そうであるならば、都合の悪い時のみ統計学の基本を無視して議論を展開することは決して許されません。

文・鈴村 泰/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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