それと昔から言われているように魚をさばけない人が多いことが価格を押し上げていることもあります。三枚におろすのはさほど難しくないのですが、たぶん内蔵を取るのが気持ち悪いこともあるのでしょう。コンロについている魚調理器を使っても後の掃除は大変だし、魚のにおいがつくこともあります。
そして私はこれを書きながら気がついたのです。カナダにいる限り、刺身は食べるけれどそれ以外の調理方法では魚はほとんど口にしていないなぁ、と。煮魚も焼き魚もほとんど食することがないのです。自分の選択肢から完全に落ちてしまっているのでしょう。残念ながら当地は魚の種類が少なく、価格は目の玉が飛び出てしまいます。理由は漁業関係者や加工にかかる労賃の上昇と商品衛生上の要求度が高まっていることもあります。するとどうしても肉食を選択せざるを得ないのです。
こう見ると食文化は確実に肉食、そして更に植物性の肉になっていくのでしょう。それに合わせる飲み物はただでさえアルコールを飲まなくなった若者にどう日本酒を啓蒙するのか、相当の工夫が必要だと思っています。個人的にはスパークリング日本酒は売り出しやすいと思います。もともと炭酸系の飲み物は胃袋を炭酸ガスで膨らませ、食欲そそそるものとされます。アペリティフ(食前酒)にシャンパンやカンパリソーダなど炭酸系が多いのはその理由。ランチでコーラとハンバーガーはまさに胃袋を膨らませてでかいハンバーガーにかぶりつくというストーリーなのです。
食文化の発展的成長という点ではお金を出せばそれなりのものが食べられますが、北米で一般大衆がグルメ食にこだわるとは思わないし、食への固執はアジア人に比べてかなり落ちる、というのが私の実感です。
例えばメキシコあたりでは魚料理はよく出てくるのですが、開いた魚を焼いたものがそのままドンと出てきます。調理なんてほとんどなくてそれにライムを絞るだけという感じです。今の人には淡泊すぎるでしょう。その点では魚も日本酒もニッチマーケットでむしろマーケットを生み出すための発想の転換が必要だと感じています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月7日の記事より転載させていただきました。
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