2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症」、いわゆる2類相当から5類感染症に変更になった。それに伴い厚生労働省のHPによれば、それまでの法律に基づく行政の要請・関与から、個人の選択を尊重し、国民の自主的な取組をベースとした対応へとなった。

それから3ヶ月が近くが経った。通勤時間帯に人が増えてきたと感じる人も多いだろう。

東京都のテレワーク実施率調査を見ると5類移行前の4月時点ですでに64.8%から46.7%と大きく下がっていた。

企業は、テレワーク導入時にはサーバーの拡充・セキュリティ対策・持ち帰り用PCの準備などのIT環境に投資が必要だった。とはいえ導入したことで、優秀な人材の採用に有利、固定費のオフィス賃料や従業員の交通費を抑えられるなどメリットも経験したはずだ。

そんなメリットを理解しながらも、なぜまた通勤にもどりつつあるのか。その理由はテレワーク自体の問題やコミュニケーションのとりにくさではなく、日本企業が引きずっている雇用慣行「終身雇用・年功序列」に行きつく。

日本企業の働き方とテレワークの関係について、日系・外資系企業で20年以上働き、海外赴任経験のあるキャリアコンサルタントの立場から考えてみたい。

※ 「リモートワーク」という呼称も一般的だが本記事では日本政府が使っている呼称「テレワーク」に統一する。 ※ オフィスワーカーの会社員が通勤せずに自宅等で勤務をすることをテレワークとする。

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政府のテレワーク推進は16年以上前から

テレワークはコロナ禍になって初めて推奨され始めたように感じる向きもあるかもしれないが、実は政府によるテレワーク推奨の歴史は長い。

16年前の2007年、すでに政府は「テレワーク」を推進している。当時の安倍首相が施政方針演説で2010年までにテレワーカーを就業者人口の2割まで増やすという目標を掲げた。就業者人口の2割とは、2005年のテレワーカー比率(推計値)10.4%の約2倍だ。

現在、総務省のHPにはテレワーク推進の理由として1.少子高齢化対策、2.ワーク・ライフ・バランス、3.有能・多様な人材の確保が記載されている。

2007年に掲げられた推進理由は1.女性活躍(仕事と家庭生活の調和)、2.生産性向上、3.就労・学習機会均等などで、表現は違うものの現在と趣旨は似ている。

コロナ前にテレワークが進まなかったのは、ネット環境・IT技術が遅れていたからでは?という疑問がわくが、2007年当時、すでにSkypeはサービスを開始しており、ブロードバンドも普及していた。現在はZoomやGoogle Meetが主流だが、基本的な機能は同じである。