カンブリア紀は生物の多様性が一挙に花開いた時代であり、アノマロカリス、オパビニア、ハルキゲニアなど現代から見ると非常に奇妙で個性的な生物たちが名を連ねています。
そして今回、このリストに新たなモンスターが仲間入りしたようです。
米カンザス大学(University of Kansas)の研究チームは、同国にある有名な地層「スペンス頁岩」から約5億年前のカンブリア紀中期にいた”完全に新型の海棲ワーム”を発見したと報告しました。
背中に花びらか刃のようなものが並ぶ奇抜な姿は、古生物学者の誰も見たことがないという。
また学名は傑作SF小説『デューン砂の惑星』と日本の「手裏剣」から命名されたとのことです。
研究の詳細は、2023年4月8日付で科学雑誌『Historical Biology』に掲載されています。
プロの古生物学者もサジを投げる謎の化石
化石が発掘されたスペンス頁岩は、米ユタ州北部からアイダホ州南部にまたがり、約5億700万〜5億600万年前のカンブリア紀中期の地層を保存しています。
1900年代初めから有名で、これまでに約90種の三葉虫や軟体動物の化石が発見されました。
第一発見者のリアノン・ラヴィン(Rhiannon LaVine)氏は、すぐにそれが普通の化石ではないことに気づいたといいます。
サイズは7〜8センチ程度ですが、放射状に並ぶ花びらか刃のような形状は今までの研究生活で一度も見たことがなかったという。

ラヴィン氏は「研究主任のジュリアン・キミグ(Julian Kimmig)氏に見せましたが、彼も当惑した顔で『そんなものは見たことがない』と話した」と述べています。
研究室に持ち帰って、他の同僚たちとも化石の正体について話し合いましたが、誰も見当がつきませんでした。
カンブリア紀中期に存在した軟体動物ウィワクシア(Wiwaxia)ではないかとの意見も出ましたが、ウィワクシアは今日のカナダと中国からのみ出土し、この地域に固有の生物ではありません。
またサイズや形態の特徴も今回の化石とは大きく異なります。

そこでチームは走査型電子顕微鏡やX線分析を用いて、化石を詳しく調べてみることにしました。