Green Carbon株式会社(以下、Green Carbon)は2023年3月1日、J-クレジット¹の運営委員会にて新たに承認された「水稲栽培における中干し期間の延長」の方法論を活用すべく、同年4月5日に稲作コンソーシアムを発足させ、この方法論によるJ-クレジットの創出プロジェクトを進めてきました。

今回、Green Carbonが提案した衛星データの活用によるカーボンクレジット創出プロジェクトがJAXA ALOS-2事業化実証のテーマの1つとして選定されました。

同社はJ-クレジット創出にかかる農家の工数削減と水田圃場のモニタリングに向けて、宮城県登米市・栗原市、フィリピンブラカン州にて、当該地域の農家、JAXAなどと協力の上、JAXAの衛星データ活用を実証していきます。

J-クレジット¹…省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量や、適切な森林管理によるCO2などの吸収量を「J-クレジット」として国が認証する制度。

農家の圃場の撮影工数を削減

水田の中干し(田んぼの水を抜いて、ひびが入るまで乾かす作業)は、土壌と空気が触れ、嫌気性菌の活動が抑制されることで、メタンガスの排出量を削減する効果があると言われています。

そこで、J-クレジットにおいて、中干し期間延長によるメタンガス削減とJ-クレジット創出の新たなアプローチとして「水稲栽培における中干し期間の延長」の方法論が承認されました。

同方法論では、中干し期間の延長を証明するデータが必要とされています。

稲作コンソーシアムにおいては、各農家が撮影した画像をエビデンスデータとして利用しプロジェクトの信憑性を担保しているものの、写真の撮影が農家にとって追加的な負担となっているそうです。

今回の実証では、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の観測データを活用した圃場の水位モニタリングと現地に設置した水位センサーとの比較により、衛星モニタリングの有用性を検証。

これにより、農家の圃場の撮影工数を削減するとともに衛星モニタリングによりプロジェクトの信憑性を高め、クレジット創出過程における透明性向上を目指します。

J-クレジット登録の障壁を緩和

J-クレジット制度「水稲栽培における中干し期間の延長」方法論は、過去2カ年以上の平均中干し実施日数から7日間中干し期間を延長することでクレジットの創出が認められた制度です。

過去2カ年以上の実施状況のデータが必須となっており、データを紛失または記録していなかった場合、プロジェクトへの参加は2年間のデータ収集を経てからとなります。

今回の実証では、だいち2号の衛星データを解析し、中干し期間延長の客観的エビデンスとしての活用を試みます。これにより、将来的に、だいち2号などの衛星データを活用して、J-クレジット登録の障壁の緩和や登録の信頼性の向上を目指すとのことです。