カナダの地層から約5億500万年前のカンブリア紀に存在した新種のクラゲ化石が発見されました。

同国のトロント大学(University of Toronto)、ロイヤルオンタリオ博物館(ROM)によると、クラゲ化石は合計で170点以上が見つかったという。

クラゲは全身がほぼ水分であり、普通は化石として残りづらいことで有名です。

研究者らは、恐竜が登場する何億年も前に海を泳いでいたクラゲの化石が大量発見されたことに驚きを隠せませんでした。

これらは過去に見つかった史上最古のクラゲ化石と考えられています。

研究の詳細は、2023年8月2日付で科学雑誌『Proceedings of the Royal Society B Biological Sciences』に掲載されました。

史上最古のクラゲの化石か?

クラゲ化石は、カナダ西部ブリティッシュコロンビア州にあるバージェス頁岩(Burgess Shale)で発見されました。

ここは約5億1000万〜5億500万年前のカンブリア紀中期の地層を保存し、当時の海棲動物の化石が多産する場所です。

新たに見つかったクラゲは、化石記録で最も古い自由遊泳性のクラゲと指摘されています。

「自由遊泳性」と条件付けされているのは、これより古い約5億6000万年前の「ポリプ」の化石が見つかっているからです。

ポリプとは、クラゲの生活環の初期段階にあたる形態で、岩石や貝殻にくっつく固着生活をします。

ポリプはのちに花のような形をした「エフィラ」となり、これが成長すると、海中を自由に泳ぎ回るクラゲとなります。

ミズクラゲの生活環
Credit: 沖縄科学技術大学院大学-OIST(2014)

ポリプは見つかっているものの、同時代の遊泳クラゲの化石が発見されていないため、クラゲの進化史は未解明のままでした。

以前に米ユタ州で5億年前のクラゲ化石の発見が報告されていましたが、のちの研究で、クラゲとは別の近縁種である「有櫛動物(ゆうしつどうぶつ、クシクラゲ類)」であると訂正されています。

それゆえ、今回のクラゲ化石の発見は非常に貴重です。

クラゲは体の95%が水分で、全身がグネグネした軟部組織のため、一般的には化石として残りません。

しかしバージェス頁岩では、海底の崖が崩壊して泥流が生じ、そこにいた生物たちが一瞬にして泥の層に埋められ、酸素の少ない状態で保存されたため、軟部組織も分解されずに今日まで残ったと考えられます。

ではその非常に珍しいクラゲの化石とはどのようなものなのでしょか?