しかし、比較的教育レベルの高くない人たちにとって「強いアメリカ」「昔のようなアメリカ」を夢見る気持ちもわかります。移民層も高度なスキルを持った人とヒスパニックなどの南からの流れ込み組で分断します。40年以上もアメリカを身近に見続けた筆者として「メルトポットのアメリカが生み出すアメリカンスピリット」がぼやけてしまった、そうとしか思えないのです。その理由は深いでしょう。ベトナム戦争もアフガンでも勝てず、イラクも怪しい結果でした。オバマ氏は「世界の警官」を止め、中国と仲良くしたあたりからアメリカはさまよいます。ハリウッド映画はかつての大ヒット作の続編ばかりで新しいものを追うチカラはありません。
フィッチの格付けはそんなアメリカを見たのだと思っています。そして3度目の起訴があっても格付けが下がっても「大した影響はない」、これが今日のメディアの主たるトーンです。これを鈍感と言わずしてなんというのでしょうか?
格付けが下がると通常はドルが売られます。が、AAAを維持している他の国はドイツなど欧州の一部とシンガポール、オーストラリアぐらいでそちらに資金がシフトするわけではないのです。規模と絶対的安定感は「やっぱりアメリカだよね」で結局1日か2日、株価にちょっと影響があるだけで翌週には忘れ去られる話になるのでしょう。
ちなみに日本の長期国債の格付けは酷いものです。S&PがA+(安定)、フィッチがA(ネガティブ) ムーディーズがA1(安定的)で世界の中では中堅国並みです。それでも国債の利率はゼロ近辺に貼り付かせるってこれぞイエレンさんの言う恣意的なものではないでしょうかね?つまり、格付けが何だろうが、資金が集まるのは先進国で安定していそうな国ということなのでしょう。
世の中は本当に複雑になったものです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月3日の記事より転載させていただきました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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