たとえば、同じ秘書官でも、第一次内閣以来の人と、第二次内閣での秘書官とでは、安倍氏の真意について語るニュアンスが違う。
一言でいえば、安倍氏は「保守派の愛国者」として軸はしっかり持っていたが、同時に立場の違う人々との対話もできた。
だから、バラク・オバマ元米大統領や、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席、さらには、イラン、アラブなどの指導者すら「安倍氏と会ってよかった」と感じ、それが日本の外交を支えた。
これから、安倍氏の薫陶を受けた人たちは、安倍氏の言葉を常に振り返り、それを保守本流の基本姿勢として尊重しつつも、「安倍イズム」の多様な発展の可能性を封じてはならない。とくに、「裏切り者」などという言葉が安直に使われることには非常な疑問を持つ。
その2つの流れが、バランス良く共存することを願う。
特に経済政策は、そのときどきの状況に応じて君子豹変(ひょうへん)も必要な分野だ。専らデフレに悩んでいた時期の安倍氏の発言を金科玉条にすべきでない。比較して、福田赳夫元首相が偉いと思うのは、根っからの財政均衡論者だったが、不景気のときに副総理や総理をやったときは、初めて赤字国債を出すことすらしたのである。
■
来週の8月9日(水)には、『民族国家の5000年史 出版記念講演会』を文京シビックセンター地下一階のアカデミー文京学習室で開催するが、その第二部は保守派の論客佐藤和夫さんと、この連載をテーマに対談する。
『民族国家の5000年史』(扶桑社)付きで2500円で、事前申し込みは特にいらないので、是非ご来場ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?