オーストリア国営放送(ORF)の気象予報官マルクス・ヴァツァック氏はインタビューの中で、「最近、視聴者から多くのメールを頂くが、その中には憎悪メール、脅迫メールが含まれている」という。同予報官が最近の欧州の異常な灼熱について、地球環境全般の危機について言及したことに対し、地球の温暖化や気候不順などを信じない人々から厳しい批判の声が届いたという。同予報官は、「最初は無視してきたが、やはり憎悪や脅迫メールは心を騒がせるものだ」と述べていた。
コロナ時代はウイルス学者や医者がワクチン接種反対、コロナ規制反対の過激な活動家たちの憎悪対象となったが、今度は環境保護を訴える環境問題学者や気象専門家が一部の人々の憎悪対象となってきたわけだ。
ちなみに、ワクチン問題も地球温暖化による気象異常問題も科学的に研究し、検証できるテーマだが、肝心の科学者たちの間でその見解が分かれているのだ。米国と英国の3人の感染症疫学者、公衆衛生科学者が表明した「グレートバリントン」宣言の集団免疫論に対しても賛否両論があったことを思い出す。科学者が混乱している時、通常の人間は何を信じていいか分からなくなり、益々イライラする。
欧州では気温が40度を超える灼熱の日々が続いた。そのような時、地球温暖化、気候不順を説く環境問題専門家、気象専門家に対し、怒りや不快感を感じる人々が出てくるのかもしれない。明らかな点は、今、幸せを感じている人間は相手を憎悪するということはない。ということは、「憎悪」という感情が渦巻く現代は、幸せを感じている人が少ないことを物語っているわけだ。いい兆候ではない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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