
韓流ブームに前後して人気観光地となった新大久保とは違う形で戦前から多くの在日韓国人が暮らす荒川区の三河島周辺。町の生活に溶け込んだ韓国の味を楽しみながら歩いてみた。
(※その他の写真は【関連画像】を参照)
■地域の生活に溶け込んだハングル文字の店構え
東京のコリアタウンといえば新宿の北に位置するJR山手線の新大久保の駅周辺が思い浮かぶ。K−POPの影響もあり、パスポートなしで日本にいながら韓国のカルチャーや料理を楽しめる“観光地”として賑わっている。
他にも都内にはコリアタウンと呼ばれるエリアは10を越えるが、その中でも都内最古といわれ、観光地ではなく地域の生活に溶け込んでいるのが荒川区の三河島界隈だ。下町の風情が残る生活空間の中にハングル文字が溶け込んでいる三河島エリアを歩いてみた。


山手線・日暮里駅から常磐線を下って一つ目の駅、三河島で下車し、まずは改札を出て駅前の尾竹橋通りを左(北)に向かう。町並みは新大久保のように軒並みハングルの看板や店が続くというわけではないが、ただ行き交う地元民と思われる人々とすれ違うときに、韓国語の会話が耳に入り込んでくることがコリアタウンを感じさせるくらいだ。
駅から5分もかからずに着いたのが、戦後の佇まいが未だ残されている通称「三河島コリアマーケット」。その路地の最奥で店の人が忙しそうに動き回っているのが三河島で最も古くから商いをしているキムチの人気店「丸萬商店」だ。

「昭和26年(1951)に母(オモニ)が済州島から日本にやってきて、ここで最初は小さな屋台でキムチを売り始めたんですよ。その母の味をずっと絶やさず今まで守り続けています」と語るのは社長の高田明栄さん。
この日もキムチを買い求める客が後を絶たなかった。キムチの種類は季節によって変わるが約45種ほどが常時並んでいる。人気は白菜、山芋、チャンジャ(魚の内臓の塩辛)。キムチ各種だけで1日200kgも売れるという。さらにキムチと人気を二分する豚足も1日に300本は出るらしい。
あやしげな、しかし趣あるこの路地も高田社長によれば、三河島は再開発が進んでいるから、ここもいつなくなるか分からないという。それでも、今の味を変えることなく続けていきたいと語る。


丸萬商店を後にして訪れたのは「東京ガーデン」という韓国風中華料理の店。事前に電話で問い合わせると「ヨボセヨ」と出たがすぐ日本語で案内された。韓国式中華は、中国王朝の従属国だった朝鮮に入ってきた料理で、昔は高級料理だったそうだが今の韓国では大衆料理として広く根付いているという。
韓国式中華の代表的なメニュー、黒味噌ベースのソースがかかる、ジャージャー麺(1000円)を注文した。それにプラスして酢豚とチャンポンが加わるセット(3300円)も人気だという。
三河島駅前の尾竹橋通りを渡ってすぐのこの店の一帯はハングル文字看板を掲げる食材店やミニスーパーなどが並んでいる。その一角にある「ウイーン」という喫茶店に入ってみた。
実はここも在日2世のママが経営する店で、人参茶やなつめ茶といった韓国の伝統茶や冷麺が何気なく喫茶メニューの中に並んでいる。韓国の伝統茶は、独特な味と香りが特徴で幅広い種類と効能があるそうだ。
町の風景に溶け込むハングルの看板を探しながら買い物や食を楽しんだ一日だった。



●丸萬商店|キムチが人気の韓国食材店

JR三河島駅から歩いて約3分。焼き肉屋の入るビルの横の路地に、昭和の風情を色濃く残す通称「三河島コリアマーケット」の奥にあるキムチの店。韓国飲料や雑貨もある。

店の横で豚や牛の肉をボイルしている。ちょうど豚のタンが煮上がってきた。牛タンにも負けない味で酒のつまみに良く合う。





焼き肉店が仕入れに来る和牛カルビ(100g/900円)はBBQシーズンには一般の客にもよく売れるという。ほかにボイルされたばかりのハチノス(牛の第二胃袋、100g/220円)や豚足(1本/205円)が並ぶ。
東京都荒川区西日暮里1-4-22
TEL:03-3807-3616
営業時間:9:00~16:30(日曜・祝日~17:30分)
定休日:無休
アクセス:JR「三河島」駅より徒歩約3分