またドイツでは、かなりの凶悪犯でも仮釈放し、GPS付きの足輪で監視しているケースも多いが、ハービク氏の場合はそうならない。何が何でも、今しばらくは氏の口を封じておきたいという強い力が働いているように感じる。
さらに私が驚いたのは、主要メディアがこの件を一切取り上げないこと。私が見つけられたのは、ドイツでは独立系のオンライン・メディアが2社と、YouTuberが1人、そして、オーストリアのやはり小さなオンライン・メディア1社だけだった。なぜか、いずれも右派とされるところばかりだ。
なお、クリスチャン・モーザーという若い弁護士が、この件を執拗に追っており、前述のメディア2社でも、法律的な見地からの詳細な解説を試みていた。興味深かったのは、医師が、法律と医師としての良心との板挟みになった場合、ドイツではわざわざ、医師が法律ではなく、自分の良心に従って行動することを認めているという話。これは、ナチ政権の下で、医師が政府の命令に従い、知的障害者などを安楽死させたことへの反省からきている。
しかし、そうだとすれば、なぜ、これがハービク氏に適応されないのか。氏が良心に基づいて法律を破り、周りの人々をワクチンの健康被害から守ったという解釈は間違いなのか。
ちなみに、この判決が出た2日後の7月3日、公営第2テレビの夜のニュースでは、ワクチンのせいで視力を失った男性が、ファイザー・ワクチンの製造元である独バイオンテック社に慰謝料を求めて起こした裁判の様子を伝えていた。眼球の脳梗塞のような病気らしいが、驚いたのは、実は、私の知り合いのご主人もワクチン接種後、まさにこの病気に冒されて、今も治療中だからだ。
しかし、第2テレビの法律家は、「ワクチン接種で起こりうる危険については、事前に十分説明がなされているので、基本的に訴えは成立しない」、「ワクチンが社会全体に与えるプラスとマイナスを考慮すれば、このワクチンはプラスが勝っている」というような解説をしていた。ワクチンに関しては、政府とメディアは足並みが揃っている。
ドイツではこの頃、司法と行政のニアミスを感じることも多くなった。ドイツはいったいどこへ行くのだろう。
文・川口 マーン 惠美/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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