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今と違い、「似たようなクルマ」になりにくかった1960年代
あふれるパワーにモノを言わせた60年代の「ホンダS」
今と違い、「似たようなクルマ」になりにくかった1960年代
ユーザーからの要求や、使用可能な技術とコストが同程度な場合、「ライバル」とされるクルマは基本的にほとんど似たものになりがちで、メーカーとしては細かい差異や耐久性、信頼性で違いを出すべく努力するものです。
しかし、1960年代の国産車といえばユーザーの目は肥えておらず、メーカーの技術力はマチマチで、何をどこまでどうやれば売れるのかがまだわかっていない時期でしたから、全く異なるアプローチのクルマが販売でもレースでもいい勝負になったものです。
1960年代を代表するスポーツカーの中でも、「ヨタハチ」ことトヨタスポーツ800と、ホンダのSシリーズはその好例だったと思います。
あふれるパワーにモノを言わせた60年代の「ホンダS」
1963年にホンダ初の小型4輪車としてデビューしたS500から、1970年に生産を終えたS800まで7年に渡ったホンダ初期の「S」シリーズは、終始そのエンジンパワーにモノを言わせた走りが最大の特徴だったと言えるでしょう。
一貫して精密機械のようなDOHC直列4気筒エンジンに4連CVキャブレターを組み合わせ、軽自動車参入実績は軽トラのT360に任せて小型車への参入実績を作るため、通称「S360」から大型・大排気量化されたS500。
それでもパワー不足でS600、S800と排気量を上げましたが、基本的にはラダーフレームへボディを載せるという古い構造が重量増加を招き、走らせて面白いクルマではあったものの、速さの追求には限界があったのも事実です。
本来、ホンダはもっと後の1960年代後半あたりの4輪参入を目指していたところ、通産省の主導で国内自動車メーカーが再編されるおそれが出たので急きょ参入。
おかげでバタバタしたクルマづくりを強いられ、特異なメカニズムも目立ちましたが、大抵のことは「強烈なパワーとトラクション性能は百難を隠す」という、力技で成立させたのがホンダの「S」シリーズでした。