土用丑の日に食べるものと言えばウナギ! ですが、実は地域によってはウナギにちょっとだけ似た「あの魚」を食べるところもあります。

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石川では土用の丑の日に「ドジョウ」を食べる? 栄養価はウナギ並み

「夏の土用」に何食べる?

猛暑が一番厳しいこの時期、古い暦の上では「夏の土用」の時期を迎えます。

もともと土用というのは季節の変わり目を示す言葉であり、気候が変化するために体調を崩しやすいといわれます。加えて猛暑も重なる「夏の土用」は、スタミナが付くものを食べて乗り切ろうとする文化が古くからありました。

石川では土用の丑の日に「ドジョウ」を食べる? 栄養価はウナギ並みうな丼(提供:PhotoAC)

特に「丑の日」には「ウの付くもの」を食べるとよいとされ、ウナギ、うどん、梅干し、うりなどといった「ウで始まる食材」が食べられてきました。これは大変よくできたダジャレで、実際にウナギはビタミンB、うどんは糖質、梅干しはクエン酸、ウリはカリウムなど夏バテを防ぐのに必要な栄養素が採れることから夏に食べるべきものといえます。

これらの食材のほか、夏の土用の時期に栄養価が豊富になるシジミや鶏卵などもこの時期の食材とされてきました。ちょっと変わったものでは、福岡県の筑後川沿川地域や岡山県の高梁川沿川地域などでは、ホタルの餌としても知られる川の巻貝「カワニナ」を食べる文化もかつてあったそうです。

夏の土用はドジョウを食べる!?

そんな「夏の土用食材」のなかでもユニークなものの一つに「ドジョウ」があります。

石川県の金沢地方では、土用丑の日はドジョウを食べるという文化が今でも根付いています。ドジョウはウナギと比べるとはるかに小さい魚ですが、当地ではウナギ同様に開いてかば焼きにして食べられています。

石川では土用の丑の日に「ドジョウ」を食べる? 栄養価はウナギ並みドジョウ蒲焼(提供:PhotoAC)

調べてみると全国的に「暑い時期にドジョウを食べる」という文化があり、夏の土用の時期に好んで食べられていたと思われます。ドジョウの資源量減少に伴って年々消費量は減っているものの、福岡の企業が完全養殖されたドジョウのかば焼き丼を店舗で提供しているなど、食材として再注目されている事例もあるようです。

ドジョウを食べる理由

夏の土用にドジョウを食べる理由について、石川県にはちょっと変わった謂れがあります。

江戸時代、キリスト教は邪教とされその信仰が禁じられており、キリスト教徒(キリシタン)と判明すると軟禁されるなどの処罰を受けました。しかし明治になり禁教処置が解除されると、各地でキリシタンたちが解放されました。

石川県でも、金沢地方の卯辰山というところに軟禁されていた隠れキリシタンが解放されたのですが、生活基盤はすべて失われ、一から生活を立て直していく必要がありました。そこで日々の生業をこなす傍ら、水田で獲ったドジョウを蒲焼きにして街中で売り歩き、生活の足しにしたのだそうです。

そこから現在に至るまでドジョウが食べ続けられているというのは、とても興味深い話であると思います。

石川では土用の丑の日に「ドジョウ」を食べる? 栄養価はウナギ並みドジョウ鍋(提供:PhotoAC)

ただ、そもそもドジョウは栄養価が極めて高く、土用向きの食材なのは間違いありません。ビタミン、ミネラル、鉄、亜鉛、カルシウムなど豊富な栄養を誇り、その小さな魚体にウナギ1匹並みの栄養を持つと考えられていたことから「ドジョウ一匹ウナギ一匹」という言葉も残っています。

いまでも各地にドジョウ料理専門店が残り、簡単に食べることができます。今年の猛暑も厳しい予想が出ていますが、ドジョウを食べてスタミナをつけてみるのはいかがでしょうか。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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