物を言った猶本、藤野の守備力

この試合でゴールを挙げた猶本と藤野は、守備面でもチームに貢献。なでしこジャパンの前線からの守備を牽引した。

この日のコスタリカ代表は、4バックを崩さずに自陣後方からパスを回すケースが多く、両サイドバックが自陣のタッチライン際に立つ場面もしばしば。ここへ欠かさずプレスをかけ、コスタリカ代表のパスワークを手詰まりにさせていたのが、猶本と藤野だった。

ハイプレスが難しい場面では、猶本と藤野の2シャドーがサイドへ移動し、なでしこジャパンは[5-4-1]の守備ブロックを形成。この2人が相手センターバックからサイドの選手へのパスを虎視眈々と狙ったほか、時折サイドから中央に絞って相手の縦パスに食いついたことで、コスタリカ代表に攻撃のリズムを掴ませなかった。

隊形変化をあまりせず、サイドバックの立ち位置も悪いコスタリカ代表の拙攻に助けられた感もあるが、猶本と藤野の守備面での献身性や戦術遂行力は称えられるべきだろう。


MF猶本光 写真:Getty Images

「いい守備があるからいい攻撃にも移れている」

コスタリカ代表戦後の猶本のコメントからも、自軍の守備への手応えが窺える。

「チームとしていい守備ができているのでここまで無失点ですし、いい守備があるからいい攻撃にも移れています。選手の一体感や雰囲気もすごくいいんですが、太さん(池田太監督)を中心にスタッフの雰囲気もすごくいいので、それもチーム全体の雰囲気のよさにもつながっていると思います」(日本サッカー協会、公式ホームページより引用)

ここまでのワールドカップ2試合で機能しているなでしこジャパンの守備が、グループステージ最終節で強豪スペインを相手に通用するかに注目したい。


MF藤野あおば 写真:Getty Images

田中美南、藤野が示したポジショニングの妙

特に前半、なでしこジャパンは淀みないパスワークでコスタリカ代表を圧倒。田中と藤野による絶妙なポジショニングが効いていたのは間違いない。

この2人が主に狙っていたのは、相手2ボランチの斜め後ろ。最初は相手2ボランチの真後ろあたりに立っておき、味方がパスを出せそうなタイミングで瞬時に斜め後ろへ移動。相手選手の死角を突くこのプレーで、田中と藤野は敵陣や中盤で攻撃の起点となった。

コスタリカ代表がなでしこジャパンの最終ラインにプレスをかけてきた際の、藤野の動き出しも良いアクセントに。前半15分と18分に、藤野が相手MFアルバラード(2ボランチの一角)の背後でDF三宅からのパスを受け、チャンスメイク。前者はなでしこジャパンの速攻や猶本の惜しいシュートに繋がった。ゴールシーン以外でも同代表の攻撃を牽引した19歳MFが、今大会でより大きな仕事をやってのけるかもしれない。