主義主張が激しくぶつかるのはセブンだけではありません。ビッグモーターも同根の部分があります。それは経営側の極端な儲け主義、効率主義に対して従業員が混乱し、常軌を逸する行動に出るのです。その背景は複雑でこのブログで数行では言い表せません。ただ、確実に言えるのはコミュニケーション方法がリアルから無味乾燥な文書や正確性に欠けるSNSが主体となっていることです。ここに双方の行き違いが生まれてしまっているのだとみています。

そごう西武の従業員は自分の仕事にプライドを持って顧客と接しています。服飾でも宝飾品でも総菜売り場でも同じです。それは会社のオーナーが誰かという話ではなく、従業員一人ひとりが丁寧に顧客の笑顔を毎日見ることにやりがいを持ってきたのです。ヨドバシになればそれがどうなるのか、指し示していません。少なくとも一般的な家電量販店の従業員が笑顔接客というイメージはなく、モニターする上司からイヤホン越しに厳しい指令が飛ぶという感じです。ビッグモーターに似ています。本当にお勧めの商品なのか、会社から利益率の良いこれを買ってもらえるように誘導せよ、と言われているのかは販売員の顔を見ればわかるものなのです。

冒頭の小説「沈まぬ太陽」の主人公、恩地さんも会社の整備部門を強化したい、労働環境を改善したいという強い思いを経営陣にぶつけますが、会社側の非情な対応にやむを得ず、ストの選択を推し進めました。労使交渉の失敗が全ての始まりとなり、航空機墜落事故の遠因にもなる、という話です。

仕事とは何か、労使関係とは何か、コミュニケーションはどうとるべきか、様々な課題が浮き彫りになってきた、そんな気がします。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年7月28日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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