日本初のデザインホテルが、開業当時の面影を残しながら再び蘇る。

2022年1月より大規模改修工事を行っていた、福岡県福岡市中央区にある「HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)」が、いよいよ10月1日(日)にグランドオープン。公式サイトで予約を受け付けている。

建築デザインの評価が高い「ホテル イル・パラッツォ」

「ホテル イル・パラッツォ」は20世紀を代表する世界的なイタリア人建築家のアルド・ロッシさんと、日本を代表するインテリアデザイナー内田繁さんがタッグを組み、日本初のデザインホテルとして1989年に開業した。

アルド・ロッシさんが日本ではじめて手がけた建築には、内田繁さんの他にもエットーレ・ソットサスさん、ガエターノ・ペッシェ氏、倉俣史朗さん、三橋いく代氏、田中一光さんなど、世界的なクリエイターが参画し話題になった。

1990年には建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」と福岡市都市景観賞を受賞。さらに1991年にはアメリカ国外の建築物として史上初となるアメリカ建築家協会(AIA)名誉賞を受賞した。

これが福岡市の春吉地区が持つそれまでのイメージを一変させ、都市における建築デザインの力を示したことでも評価されている。

ロッシさんは建築と都市デザインに大きな影響を与えたイタリアの建築家・理論家。ポストモダン時代の理論をリードする建築家のひとりだ。

Nacása & Partners Inc.

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一方、内田さんは世界的に評価された、日本を代表するデザイナー。各国での講演やコンペティションの審査、展覧会、国際的デザイン企画のディレクションなど、つねにその活動が新しい時代の潮流を刺激し続けてきた。

大規模改修につながった「Re-Design」プロジェクト

当時、博多ホテルズ社だったワンファイブホテルズ社は前運営者から事業譲渡を受け、2019年5月末から同ホテルの運営を開始しつつ、バリューアップを検討し始めた。

そして、2022年1月、およそ2年におよぶ「Re-Design」プロジェクトにより、同ホテルの大規模改修を行なうことに。

「Re-Design」プロジェクトのディレクションとデザインは、内田さんの逝去後も、彼の思いやデザインの理念を受け継ぐ「内田デザイン研究所」が手掛けた。

目指したのは、“時代とともに生き続ける建築”

内田さんが同ホテルを手掛けるにあたり目指したのは、時代とともに生き続ける、地域に根づいた社会資産となるべきものをつくることだったという。

1989年開業時のホテルロゴデザインを復活させ、ロッシさん設計の外観デザインもオリジナルを尊重し一部復元。

ディスコ、イベントホールなど、時代やニーズに合わせて独自のカルチャーを発信してきた地下空間は、130席の大型ラウンジに生まれ変わらせた。

そして、階段を登る必要があったエントランスは、1階から段差なく直接アプローチ可能にし、1989年のオリジナルの配色を踏襲したエントランスは「結界」をイメージした。

34年の時間を経て「Re-Design」された、「ホテル イル・パラッツォ」の洗練された空間を体感できるまであと少し。開業を心待ちにしたい。

HOTEL IL PALAZZO
所在地:福岡県福岡市中央区春吉3-13-1

(hachi)