世界的な建築家・アルド・ロッシさんと、日本のインテリアデザイナー・内田繁さんが手がけ、画期的なデザインホテルとして30年以上の歴史を歩んできた福岡県福岡市の「HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)」。

2022年1月から「Re-Design」プロジェクトとして約18億円をかけ大規模改修工事を行ってきたが、10月1日(日)にグランドオープンすることが決定した。現在、公式サイトで予約受付を開始している。

開業時に大きな話題となった「ホテル イル・パラッツォ」

1989年に開業したホテル イル・パラッツォは、20世紀を代表する世界的なイタリア人建築家のアルド・ロッシさんと、日本を代表するインテリアデザイナーである内田繁さんがアートディレクターとしてタッグを組んだ日本初のデザインホテルだ。

アルド・ロッシさんは、建築と都市デザインの分野で活躍した建築家・理論家で、ポストモダン時代の理論をリードする建築家のひとりとされる。代表作にイタリアのモデナの墓地やカルロ・フェリーチェ劇場、オランダのボネファンテン美術館などがある。

アルド・ロッシさん

アルド・ロッシさん

一方の内田繁さんは日本を代表するデザイナー。世界各国で講演やコンペティションの審査、展覧会、国際的デザイン企画のディレクションなどを行ってきた。

代表作に山本耀司さんのブティック、神戸ファッション美術館、茶室「受庵 想庵 行庵」、ザ・ゲートホテル雷門などがある。メトロポリタン美術館、М+美術館等に永久コレクションが多数収蔵されている。

内田繁さん

内田繁さん

1989年のホテル イル・パラッツォ開業時は地域全体の拠点開発を理念とし、「目指したのは、時代とともに生き続ける地域に根づいた社会資産となるべきものをつくること」と内田繁さんが述べている。

両氏のほかにも、エットーレ・ソットサスさん、ガエターノ・ペッシェさん、倉俣史朗さん、三橋いく代さん、田中一光さんら世界的なクリエイターが参画し、当時大変な話題になったという。

1990年には、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」、福岡市都市景観賞を受賞。1991年には、アメリカ国外の建築物では史上初となるアメリカ建築家協会(AIA)名誉賞を受賞している。

オリジナルを尊重しながら時代に沿った工夫を凝らす

「Re-Design」プロジェクトは、所有者変更を経て建築当初のコンセプトから変化してしまった箇所を中心に、当時のコンセプトを前提としながらも時代に合ったサステナブルな改修を施すものだという。

デザインだけでなく社会的資産としての同ホテルの価値に着目し、内田繁さんの逝去後も同氏の思いやデザインの理念を受け継ぐ「内田デザイン研究所」をパートナーに選定した。

アルド・ロッシさん設計の外観デザインは可能な限りオリジナルを尊重し、一部を復元した。1989年のオリジナルの配色を踏襲したエントランスは「結界」をイメージしている。また開業当時のホテルロゴデザインを復活。

時代に即した変化も加える。階段を登る必要があったエントランスは、1階から段差なく直接アプローチ可能なユニバーサルデザインに。

ディスコ、イベントホールなど、時代やニーズに合わせて独自のカルチャーを発信してきた地下空間は、130席の大型ラウンジに生まれ変わった。客室はスーペリアクイーンとデラックスキングの2タイプに加えて、バルコニー付の客室を新設する。

新生ホテル イル・パラッツォは、すでに公式サイトにて今秋以降の宿泊予約が可能。当時の理念を大事にしながら、令和の時代にマッチした新施設をいち早く体験したい。

HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)
開業日:10月1日(日)
所在地:福岡県福岡市中央区春吉3-13-1
アクセス:福岡市営地下鉄空港線「中洲川端」駅から徒歩約7分、JR「博多」駅からタクシーで約6分
客室:全77室

(SAYA)