青魚による食中毒の原因物質として知られるヒスタミン。サバの刺身やしめサバなどで中毒すると思われがちですが、最近は予想外の料理が原因になる例が報告されています。
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塩サバで集団食中毒
6月13日、奈良市の保育園など複数の施設で、給食のサバの塩焼きを食べた園児数十名に発疹などアレルギー様の症状が発生するという事件がありました。
その後の調査により、サバから食中毒を引き起こすヒスタミンという物質が検出されたため、奈良市保健所はヒスタミンが原因の食中毒と断定しました。
ヒスタミンが原因となった食中毒はこれまでも保育園や学校で発生しており、規模が大きくなりやすいのが特徴です。2015年には87人の食中毒が、2018年には保育園で92人の食中毒が発生した例があります。
加熱したサバでもリスクあり
ヒスタミンはアミノ酸の一種であり、ヒスチジンという物質が細菌などの作用によって変化することで生成されます。サバをはじめとした青魚にはヒスチジンが多く含まれていることから、ヒスタミン中毒の原因になりやすいです。
なかでも、古くから「鯖の生き腐れ」という言葉があるように、サバは鮮度落ちがとりわけ早い魚です。一見すると食べられそうに見えても、内部ではヒスタミンが大量に生成済みということもよくあり、結果としてサバを食べてヒスタミン中毒となる例は非常に多いです。
一方で、今回の食中毒事故は「塩サバ」が原因になったことで注目されています。これはおそらく、加熱済のサバで食中毒が起きたことが意外に思われたのではないかと思います。
実際のところ、ヒスタミン生成菌は加熱によって死滅するため、加熱されたサバの内部でヒスタミンが発生することはありません。しかし一方で、ひとたび生成されたヒスタミンは加熱によっても変性することはありません。
そのため今回の中毒事故では、塩サバが加熱される前に鮮度が落ちてしまい、ヒスタミンが生成された状態で加熱処理をしてしまったのではないかと推測されています。
だしパックでヒスタミン中毒
以前には、より意外な食材が原因と目されるヒスタミン食中毒の事件も発生しています。それは「だしパック」。
今回の一件と同様、保育園における給食で園児たちが食中毒を起こしたのですが、自治体が調査したところ「きつねうどん」からヒスタミンが検出されました。そのため「きつねうどんのだしをとるのに使った、だしパックにヒスタミンが含まれていたのではないか」と推測されたのです。
当初は「だしパックを推奨される時間より長く煮てしまったためにヒスタミンが発生した」という見解もあったのですが、前記の通り加熱によって新たなヒスタミンが発生することはないため、この説は否定されました。ただし、だしパックに含まれていた魚由来原料が加工前にすでにヒスタミンを含有する状態になっていたというのは理屈から言ってもあり得る話ではあります。
ヒスタミンによる中毒の難しいところは、食材の中でヒスタミンが生成されてしまったかどうかが外見からはわからないという点でしょう。仮に大量にヒスタミンが生成されていれば、口にすると刺激的な感覚があるそうなのですが、これも確実とはいえません。
加熱された青魚やその加工品を購入する際は、原料の鮮度保持がしっかりなされたことがわかる、信頼できるお店で購入するのが大切でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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