中世時代の皇帝や王は部下たちに様々な命令を言い渡す時、自身を選んでくれた神に尋ねてから、神のお告げとして部下たちに命令するパターンが多かった。ところが、ロシアのプーチン大統領は自身を皇帝とし、神が彼に仕えていると考えているようだ。

「未来の技術フォーラム」本会機に出席したプーチン大統領(2023年7月13日、クレムリン公式サイトから)
通常、「神→指導者→国民」というのが指令ラインだが、プーチン氏の場合、「プーチン→神→国民」というラインだ。プーチン氏が「ウクライナはロシアに帰属する」というナラテイブ(物語)を語ると、プーチン氏はロシア正教会最高指導者キリル1世(神の代身に位置する)にウクライナ戦争の歴史的背景を国民に説明させている。
キリル1世はウクライナ戦争勃発後、プーチン大統領のウクライナ戦争を「形而上学的な闘争」と位置づけ、ロシア側を「善」、退廃文化の欧米側を「悪」とし、「善の悪への戦い」と解説してきた。そして「ウクライナとロシアが教会法に基づいて連携している」と主張し、キーウは“エルサレム”だという。「ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋がりを捨て去ることはできない」と強調し、ロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士に闘うように呼び掛ける。