台形フォルムの安定感と、キビキビした走り

この記事の公開日は2023年7月12日。今から51年前の今日――すなわち1972年7月12日に発売された名車をご存じであろうか? ホンダ・シビックの初代モデルである。

シビックは現在も車名が存続している車種であり、ホンダとしては最長の歴史を持つネーミングである。現在ではサイズも大きくなり、近年のモデルでは4ドア・セダンや5ドア・ハッチバックがメインとなって、その性格も50年前とは大きく変わってきているが、六代目あたりまでは、つまり登場から四半世紀ほどの間は、3ドア・ハッチバックがメインの小型大衆車であった。そうした意味でもメーカーの基礎を担ったモデルであったが、初代シビックは特に、世界的ヒットと言えるほどの成功を収め、四輪車メーカーとしてのホンダの基礎を固め直したのが特筆すべき点である。

前述の通り、初代シビックは1972年7月12日に発売された。当時のホンダの四輪乗用車におけるラインナップは、軽自動車のライフとZ、小型セダンとクーペのホンダ1300(同年10月からはホンダ145)で構成されていたが、空冷にこだわった1300が大失敗となったこともあり、シビックは力の入ったニューモデルとなっていた。

何と言っても最大の特徴は、当時は軽はともかく小型車としては珍しかった2ボックス・スタイルを採用していたことである。そのため、排気量などから言えば1300/145の後継車的存在となってもおかしくはなかったのだが、ボディサイズは全長で600mmほど短い(セダンとの比較)。具体的には全長3405mm/全幅1505mm/全高1325mm、ホイールベース2200mmという寸法となり、このディメンション上に構築されるボディは、安定感のある「台形フォルム」を謳っていた。

「台形フォルム」とは、前後から見ても横から見ても台形のシルエットを持つフォルムということで、ボディの形状だけではなく、広いトレッドと長いホイールベースが相俟って構成されるものである。プロポーションは2ボックスであるが、独立したトランクを持つ2ドア・セダンとなっており、リアをハッチゲートとした3ドア・ハッチバックも併せて発表されたものの、こちらの発売は遅れて9月からであった。

レイアウトはFFで、横向きに搭載されるエンジンは水冷直列4気筒OHC 1.2L、最高出力は60psというものだった。それまでのホンダのイメージからすればかなりマイルドな方向性(メーカー自らこの時期のクルマ造りを「まろやか路線」などと称した)だが、むしろセールスポイントとなったのは、22km/Lという低燃費の方であろう。サスペンションは前後ともストラットで、キビキビした走りと、安全で誰にも扱いやすいことを目標に設計されていた。

まず発売されたのは4グレード、そしてその装備は グレードは下からスタンダード、デラックス、ハイ・デラックス、GLの4種を設定。GLのみは大型の前後バンパーを装着しているのが特徴で、そのため全長が他のモデルより140mm長く、3545mmとなる。スタンダードは2ドアのみの設定、木目の内装パネルやラジオはデラックス以上に装備、ハイ・デラックスではさらにアームレストやカーペットが付く。GLでは前輪ディスクブレーキやフューエルメーター、タコメーターや水温計、リアワイパー、高級レザー調シートやセンターコンソール、砲弾型フェンダーミラーなどが奢られていたが、逆に言えば当時はこうした装備もトップグレード以外には装着されていなかったということである。

車両価格は2ドアの場合、スタンダード42.5万円/デラックス47.5万円/ハイ・デラックス49.5万円/GL 53万円(いずれも東京地域)。初代シビックと言えば思い起こされる低公害エンジンのCVCC搭載モデルは翌年、スポーティモデルのRSは翌々年の追加である。そのほか4ドア/5ドアやバンなども加えながら、初代シビックは1978年まで販売された。

文・CARSMEET web編集部/提供元・CARSMEET WEB

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