マイナンバーは従来、法律で社会保障と税、それに災害対策の3分野に利用できる範囲が限定されていたが、6月2日に成立した改正案によって国家資格の更新や自動車に関わる登録、外国人の行政手続きなどの分野にも範囲が広がり、また法で認められた業務に「準ずる事務」なら法改正せずに政省令で利用できるようにもなった。
また例えば、「公金受取口座」として、マイナンバーと銀行口座の紐づけは現在任意だが、財務省としては国民の財産把握のためにやがては全口座強制に持って行きたいという意欲を抱いている。
現在でも当局が犯罪等に関係した個人口座を調べる事は可能だが、やがては法改正等が必要なものの令状なしで即時に調べる事や口座凍結、預金封鎖等を可能なようにしたいというのは、政府・官僚機構が本能として持っているだろう。
マイナンバーカード取得の事実上の義務化は、直接的には必ずしも関係なくとも、空気で動く日本社会では、こうしたマイナンバー制度の政府権限の拡大へなし崩し的に進むための精神的舗装道路とも成り得る。特に現在、左派野党が政権運営能力の涵養をハナから放棄している中、日本維新や国民民主もLGBT理解増進法案等に賛成する等、自民公明の別動隊のように動いており歯止めとしての機能が期待薄であるため、事は一気に進む機運がある。
諸外国でのマイナンバーに準ずる制度では、エストニア等の比較的小規模な国では、「電子政府」と言われるように広範囲に行政手続きに組み込み、独仏等の比較的大きな国ではプライバシー面の懸念から部分的、分割的な運用に留めている傾向がある。また、米国や韓国では実際の弊害も起きているようである。
日本では、こうした諸外国の事例、事情を深く観察し、利害得失を勘案しその適用範囲を慎重に定めるべきである。マスメディアもパーシャルで表面的、刹那的な事以上のものを語る意欲と能力を欠いている中、国民自身が目覚める必要があるだろう。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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