オーストリア国営放送のワシントン特派員、クリストフ・コール記者は、「米大統領はクラスター弾の供与問題では道徳的な視点と純粋な軍事的考慮の間で悩んだが、最終的には後者を優先した」と解説していた。バイデン米大統領がCNNとのインタビューで、「ウクライナ軍はロシア戦争で勝利しなければならない」と強調していたが、その目的を実現するため「手段は正当化された」というのだろう。

NATOのストルテンベルグ事務総長は、「クラスター弾はロシア軍もウクライナ軍も使用してきた。違いはロシア軍は侵略のためにそれを利用し、ウクライナ軍は主権を守るために使ってきたという点だ」と説明、クラスター弾でウクライナの土壌は既に汚染されているというのだ。

ところで、ウクライナを支援してきたNATO加盟国では米国のクラスター弾の供与について、今年下半期の欧州連合(EU)議長国スペインのロブレス国防相は8日、「クラスター弾は国際的に使用禁止された武器だ」と主張、クラスター弾のウクライナ供与に反対している。英国のスナク首相も同日、「わが国はオスロ条約の加盟国だ」として、クラスター弾の供与に反対する姿勢を明らかにしている。

ドイツでは主力戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与問題で国内で意見が対立したが、クラスター弾の場合、オスロ条約加盟国と非加盟国の間で対立、特に、ウクライナに武器を供与してきたNATO加盟国の間で意見が分かれてきているのだ。

バイデン米大統領は9日から欧州を歴訪、11日から12日の日程で、リトアニアで開催されるNATO首脳会談に参加するが、同会議の狙いはNATOのウクライナ支援の結束強化だ。ウクライナのNATO加盟問題では、バルト3国やポーランドが早期加盟を支持している一方、米国やフランスは慎重だ。そして今、クラスター弾の供与問題で加盟国間で意見の違いが浮かび上がってきたわけだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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