その粘りもあり今回アメリカがクラスター弾を使わざるを得ないと判断すればこれは実情、米ロの戦いになってしまう点に非常に懸念を覚えます。アメリカは基本的に自分たちが汚れ役にならなければ思い切った算段に出ようとするのは第二次大戦中のルーズベルトの判断と似ています。自分たちは戦争には関与しないと言いながら日本がハワイを不条理に攻めたという理由でルーズベルトは戦争をしない公約を破棄し、日本を攻め立てました。が、実際にはアメリカがハルノートで日本を焚きつけたことが直接的な引き金でしょう。
今回のアメリカのウクライナへの関与もなんだかんだ言っていつの間にか主導権を握っているのです。欧州諸国は自分たちに火の粉がかからないようにしていること、ドイツが橋頭保になっていることもあり、ゼレンスキーは欧州のことよりもアメリカの言うことを聞くようになっています。実際クラスター弾の使用を欧州諸国は反対しそうな勢いです。
私が恐れるシナリオはポーランドです。同国は過去、2度、世界地図から消えています。一度目はナポレオン戦争後の1772年から95年にかけてのプロイセン、オーストリア、ロシアによる分割、二度目が第二次大戦の際で、亡命政権はロンドンに置かれていました。ポーランドのロシアに対する怨嗟は特別なものがあります。よってウクライナがロシアの手に落ちるのはポーランドにとっては脅威であり、ポーランドがいつ、銃を取ってもびっくりはしません。しかし、ロシアがポーランド、ひいてはNATOを相手に戦う余力はゼロなのでそちらは刺激せず、形式上の地域戦争に留めたいところでしょう。
このところ言われているのが年内休戦ないし停戦にするための落としどころを探るという話です。これではヤルタ秘密協定のようなものです。ロシアを一発でノックダウンさせたいなら千島列島や樺太、シベリアを攻めればよいのですが、それには道義が無いのでできません。(しかもそれをしたら中国軍がでてくるかもしれません。)しかし、ロシアはそれぐらい弱っているし、ウクライナもそのロシア相手にてこずっているというのが私の見方です。
個人的にはクラスター弾を使うのは反対、アメリカが表立ってそこまで関与するのも反対です。そうなればロシアを焚きつけるだけで東部ウクライナが復興できないほどの壊滅的ダメージとなるでしょう。今回の戦争に対して世論も1年前に比べてはるかに冷静になっていることを考えるとバイデン政権にとってクラスター弾を使うことが自身の政治的利用にもプラスになるとは思えないのです。
あくまでも個人的意見です。本件は皆さんのご意見を特にお伺いしてみたいと思っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年7月9日の記事より転載させていただきました。
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