石破茂です。
ロシアとウクライナとの戦闘はいかなる形で停戦となり、そして終戦となるのかについて、我が国においても議論が必要です。
この事態が深刻なのは、侵略国であるロシアが核を保有した国連安全保障理事会の常任理事国であり、プーチン大統領が「ロシアが先制核攻撃を受けた時」「通常兵器によるものであっても、ロシアの存亡に関わる事態となる攻撃を受けた時」は核を使用すると明言しているところにあります。
2018年にプーチン大統領はテレビ番組で「ロシアが存在しない世界がなぜ必要なのか」と発言しており(同様の発言をかつて北朝鮮の金正日国防委員長もしていたように記憶します)、これを単なる脅しと片付けるべきではありません。
いかにロシアが国際法に違反した一方的な侵略国であっても、ロシアを決定的に存亡の淵にまで追い詰めた場合、世界的な全面的核戦争になりかねないという恐ろしさがあります。アメリカもこの危険性を十分に認識しているからこそ、現在のような対応に終始しているのでしょう。
一方においてウクライナのゼレンスキー大統領はクリミアの奪還を大きな目標として掲げており、これをプーチン大統領が「ロシアの存亡に関わる事態」と判断した場合に何が起こるのか。

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ウクライナが一方的な被害国で、正義はウクライナにあり、ロシアが決定的に悪であるとしたところで、正義だけが平和をもたらすわけではないでしょう。このように考えると、ヒトラーに妥協して結果的に第二次大戦を引き起こす結果となったチェンバレン英国首相を想起してしまいますが、ナチス・ドイツは核兵器ほどの大量破壊兵器は保有していませんでした。核の恐ろしさをまざまざと見せつけられる思いです。
ところで、ロシアの民間軍事組織「ワグネル」の反乱はあっけない幕切れとなりましたが、なぜあの名称がドイツの大作曲家であり、ゲルマン人芸術の精華としてヒトラーが心酔していたリヒャルト・ワーグナーに由来するのか、私にはよくわかりません。どなたかご存じの方があればご教示ください。