読者の皆さんは、記事冒頭にある木の幹が男性の顔、女性の顔どちらの顔に見えるでしょうか?
おそらくほとんどの人が「男性の顔」に見えるのではないでしょうか。
雲や壁の模様などの無生物が、無意識に、動物の姿や顔のように見える現象は「パレイドリア」と呼ばれます。
これは普段からよく観察しているパターンを、無意識のうちに探し、存在していないにもかかわらず、心理的に体験することを意味しています。
具体的な例として、車が人の顔に見える、月の模様が兎に見えるなどが挙げられます。
その中でも、顔が存在していないのもかかわらず、顔のパターンを見つけ出し、顔があるように見えてしまう現象を「顔のパレイドリア現象」と呼びます。
今回、アメリカ国立衛生研究所のSusan Wardleらの研究チームは、「顔のパレイドリア現象」が年代を問わず生じ、見えた顔が男性の顔に見えやすいことを報告しています。
研究の詳細は学術誌「Cognition」に2023年2月13日に掲載されました。
「顔のパレイドリア現象」は年代を問わず生じるのか?
過去の研究では、「顔のパレイドリア現象」で見える顔が女性よりも男性の顔に見えやすいことが報告されています。
研究を主導した、アメリカ国立衛生研究所のSusan Wardleらの研究チームは、過去の研究の結果が再現されるのか、また調査サンプルの年齢層の枠を広げても確認される現象なのかを検討しています。

研究チームは4歳から80歳までの子どもと大人453名を対象に、目玉焼きや洗濯機などの、100枚以上の日常的な物体が写った画像を見てもらい、画像の中に顔を認識することができるかどうか、また見えた顔が女性・男性どちらの顔に見えるのかを回答してもらいました。
実験で使用された画像は上記のように、顔に見える画像、顔に見えない画像の他に人間の顔が写っている画像の3種類が用意されていました。
さて、「顔のパレイドリア現象」は年齢によって違いは見られたのでしょうか。
顔のパレイドリア現象で見える顔は男性の顔に見えやすい
実験の結果、顔のパレイドリアの現象は、年齢を問わず、幼少期の子どもから高齢者まで見られることが確認されました。

しかし、上記の画像に示されるように年齢によってどのような無生物が顔に見えるかには違いがありました。
そして顔のパレイドリア現象で見える顔は、女性よりも男性の顔のように見えることも報告されています。

上のグラフを見ると性別の評価について男性と判断した画像の数が年齢を問わず多く集まっているのが分かると思います。(グラフの右側ほど男性に見えるという評価を示す)
見える顔が男性に見える確率は女性に見える確率の2倍以上になりました。
具体的に「顔のパレイドリア現象」で女性と男性の顔に見える画像は以下のようなものでした。

しかし、なぜ物を顔として認識した際、多くの人がそれを男性であると感じてしまうのでしょうか?