日本は福島原発の事故以来、原子力発電への意欲を失し、意気消沈しています。その一方で、ChatGPTのアルトマン氏が次は核融合発電の開発に取り組むというのですから、そのチャレンジ精神、巨大な経営リスクを恐れない精神構造に感嘆してしまいます。

タイタニック号関連の事故に対し、「タイタニック号の亡霊。リスクを考えると、あまりにもはかない終わり方だった」という解説を目にしました。乗船してお亡くなりになった事業創業者(オーシャン・ゲート社)の自己過信の問題は問われることになろう。それにしても、潜水ツアーのリスクはあまりにもはかない終わり方だった」と。

異論はないにしても、それだけのことなのかなあ、というのが私の感想です。新聞社説でも「潜水艇の事故/無責任なツアーが惨事を招いた」(読売新聞、6月29日)という平凡な批判論を主張しています。

「富裕層や冒険家の間でも、危険を冒してでも間近でタイタニック号をみたいという。強い水圧がかかる深海への潜航だから強度試験をきちんとやるべきだった。こうした特殊なツアーについては、規制強化が必要になる」と。この社説にも異論はありません。そこから先に何を感じ取るのかです。

「はかない終わり方」、「無責任なツアー」、「規制強化を」など、そこで終わっていたら、通常の大事故に対する指摘と変わりがありません。

世界を変えるかもしれない新たな旗手はアルトマン氏ばかりでなく、イーロン・マスク氏(南ア出身)も驚くべき経営者です。電気自動車(テスラ)、宇宙開発(スペースX)、太陽光発電、ChatGPT支援など、壮大な構想をもって、次世代に向っています。

日本の経営者とは比較にならないスケールで構想し、大きなリスクを負うこともいとわない中核的な人材がごろごろしている。そういう精神構造、社会構造が生んだ失敗策が今回のタイタニック号を目指した潜水艇の悲劇ということになるのでしょう。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?