「イジメは犯罪」というフレーズを聞いたことがある人は多いでしょう。
しかし最新の研究によって将来、殺人犯や暴行犯となるような人物が、その異常さを子供時代から発揮している可能性があることが示されました。
フィンランドのトゥルク大学(University of Turku)で行われた研究によって、8~9歳のときに頻繁にイジメを行っていた子供たちは、成人後に暴力的な犯罪を起こす確率がイジメを行っていない子供たちに比べて何倍も高いことが判明しました。
ならばイジメの防止を通して、将来の凶悪犯罪を減らすことが可能なのでしょうか?
研究内容の詳細は『European Child & Adolescent Psychiatry』にて公開されています。
子供時代の「イジメっ子」は大人になると暴力事件を起こしやすい
これまでの研究により、深刻なイジメを繰り返す子供は単に攻撃性が高いだけでなく、共感能力が欠如しており、罪悪感が極度に薄く、感情も希薄で、高レベルの冷淡さをもって他者を加害し続けることが判明しています。
このような異質な精神的特徴は反社会的傾向を持つ大人や、殺人犯罪者や深刻な暴力を繰り返す大人に見られるものと一致しています。
そこで今回、トゥルク大学の研究者たちは5400人の子供たちを対象に、親や学校に報告されたイジメの記録と、その子供たちが31歳になるまでに犯した罪の記録を調査することにしました。
「子供時代のイジメ」と「将来の犯罪行動」の間に何らかの関連があれば、データに反映されるはずだからです。
結果、イジメを行っていた子供たちはイジメを行っていなかった子供たちに比べて、成人後に暴力的な犯罪を犯す割合が高いことが判明します。
また犯罪を起こす確率は全般的に、イジメを行っていた頻度と連動していました。
特に頻繁なイジメを行っていた場合、成人後に何らかの暴力犯罪を犯す確率は、男の子では3.01倍、女の子では5.27倍に及ぶことが判明します。
子供時代のイジメは殺人などの凶悪犯罪にもつながる
さらに今回の研究では、単なる暴力犯罪だけでなく、殺人や障害が残るレベルの重度の暴行とイジメの関係についても調べられました。
結果、特に男の子において顕著な相関関係があらわれました。
頻繁なイジメを行っていた男の子たちは殺人・殺人未遂・障害が残るほどの加重暴行・過失致死などを起こす単純な確率が6.55倍、親の教育レベルや本人の精神病の影響などを取り除いても2.86倍に達していたのです。
一方、女の子の場合はイジメの頻度にかかわらず、成人後に殺人や重度の暴行事件を起こすケースは極めて稀であり、相関関係はみられませんでした。
研究者たちは発達段階(子供時代)ではイジメとして現れていたものが、成人後には殺人や暴行などに変化する可能性があると述べています。
なお今回の研究ではイジメの被害者と暴力犯罪の比較も行われましたが、関係性は低いとのこと。
研究者たちは最後に、子供時代のイジメを防止することが、将来の暴力犯罪を減らすカギになると述べました。
日本の教育現場では、イジメ問題が起きた際、学校側が事実を隠蔽するようなニュースを良く見かける印象があります。
しかし今回の研究報告は、イジメにおいて加害児童への適切な指導やケアを行うことが教育上重要であることを指摘しています。
子どもたち自身のためにも、社会全体の利益のためにも、イジメ防止について検討していかなければならないでしょう。
参考文献
Bullies Have Increased Risk for Violent Offenses元論文
Bullying at 8 years and violent offenses by 31 years: the Finnish nationwide 1981 birth cohort study