もうすぐ夏、セミの大合唱が始まる季節です。
中でも「ツクツクボウシ」は、曲のイントロやサビのように鳴き声が各パートに分かれている珍しい特徴を持っています。
しかし、その生物学的な意義はいまだ明らかになっていません。
そんな中、九州大学と大阪公立大学の研究チームは、このパート分けの実態解明に一歩前進する発見をしました。
ツクツクボウシのオスは、他のオスが鳴いていると「合いの手」を入れるのですが、あるパートで「合いの手」の数が大幅に増えることが判明したのです。
何か彼らなりのセッションのルールがあるのかもしれません。
研究の詳細は、2023年5月29日付で科学雑誌『Entomological Science』に掲載されています。
ツクツクボウシの鳴き声の「パート分け」は何のため?
セミはカエルやコオロギと同じく、オスだけが鳴き声を発する生き物です。
オスのみが発する鳴き声は主に「メスへのアピール」の目的があります。
ツクツクボウシも例外ではありませんが、一方で彼らの鳴き声はセミの中でもとりわけ複雑です。

その鳴き声はまず「ジジジ、ジワジワジワ」というイントロから始まり、メインの「オーシンツクツク」という前半パートと「ツクリヨーシ」という後半パートに分かれます。
研究者の方はこの擬音で表現していますが、皆さんにも同じように聞こえるかは分かりませんね。
実際にツクツクボウシの音声を聞いてみましょう。
前半パートは確かに「オーシンツクツク、オーシンツクツク」と聞こえます。
その反復が徐々に速まって、途中「ツクリ〜」で一度繋いでから、後半パートの「ツクリィヨーシ、ツクリィヨーシ」に移り、最後「ツクリィヨーシ〜」と伸ばしてフィニッシュしているように聞こえますね。
こうした複雑なパート変化はセミの中でも珍しく、その生物学的意義は明らかになっていませんでした。
もちろん、鳴き声そのものはメスへのアピールが主な目的でしょうが、パート分けする理由はわかっていません。
しかし他方で、ツクツクボウシの鳴き声は「オス間のコミュニケーション」の側面も非常に強く、特に彼らは他のオスの鳴き声に対し「ギーッ」という合いの手を入れることが知られています。
そこで研究チームは今回、前半と後半の各パートが他のオスに異なる反応を引き起こすのではないかと仮説を立て、検証を開始しました。