
島根県唯一の百貨店である一畑(いちばた)百貨店が、2024年1月14日に閉店する。
一畑百貨店は1958年に島根県松江市の殿町(とのまち)で開業。三越(現在の三越伊勢丹ホールディングス)と提携し、現在も親会社である一畑電気鉄道の直営事業として始まった。一時は出雲店や浜田店を出店し、複数店舗体制で営業。1998年に本店の松江店を現在のJR松江駅前に移転し、ピーク時の2002年には年間108億円を売り上げた。しかしその後、大型ショッピングモールの出店や、オンラインショッピングの普及などの煽りを受け、2014年以降は赤字が続いた。そこにコロナ禍が追い討ちをかけ、直近の2023年3月期の売上高は43億円まで落ち込んでいた。
しかし一畑百貨店は、状況を打開するため、2024年夏にリニューアルオープンする計画を立てていた。2022年から水面下で準備を進め、若い世代を取り込めるテナントの誘致を念頭に約120社に働きかけたが、最終的に1店の合意も得られなかった。形勢逆転は叶わず、5月19日に行われた一畑電気鉄道の取締役会で閉店が決議された。
65年という長きにわたって愛されてきた松江のシンボルマーク的存在の閉店は、地元住民にとって悲しい知らせであることはもちろん、松江市にとってもショックな出来事だ。 松江市の上定昭仁(うえさだ あきひと)市長はメディアに対し、「松江の中心市街地、一等地の旗艦店舗が一畑百貨店だったので、まちづくりへの影響は避けられない」と話しており、地域経済への影響を懸念している。 なかでも早急に対処しなければならないのは、雇用の問題だ。従業員118人は一部を除き、2024年1月末で解雇となる。6月15日に松江市は専門対策チームの初会合を開き、労働局や県、商工会議所などと連携し、従業員の雇用確保を最優先に取り組むことを確認した。上定市長は、「来年1月の閉店までの期間は正直短いと感じるが、従業員が1人も路頭に迷うことがないよう対応していく」と話した。 一畑百貨店の川内孝治(かわうち こうじ)社長も、「従業員の再就職まできっちりやっていかなくてはいけない。今回の閉店決定については断腸の思いです」とコメントした。百貨店の建物や土地は、今後一畑電気鉄道が中心となり、再活用の検討を進めていく。
これで島根県には、日本百貨店協会に加盟しているデパートがなくなることになる。全国で百貨店がない県は、2020年1月に大沼が経営破綻した山形県、同年8月にそごう徳島店が閉店した徳島県に続き、これで3県目だ。 今年4月には、愛知の名鉄百貨店一宮店が2024年1月に閉店すると発表され、続く5月には、広島の尾道福屋も同年1月に閉店すると明らかになった。 日本百貨店協会によると、ピーク時の1999年は311店だった全国の百貨店数は、現在約4割減の181店。コロナ禍の終息で追い風を受けている都市部の百貨店とは対照的に、地方百貨店は苦境に立たされ続けている。
文・茂木美櫻/提供元・SEVENTIE TWO
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