自然からインスピレーションを受けた作品と、作品を取り巻く環境が渾然一体となる美しい空間。
淡路島の空中禅道場「禅坊 靖寧(ぜんぼう せいねい)」を舞台に、建築家・現代アーティストとして活動する奈良祐希氏の個展「samādhi」が7月23日(日)から8月6日(日)まで開催される。
作品と環境の共創をテーマにする個展「samādhi」
同展では奈良氏の代表作「Bone Flower」と新作「Bone Flower_Nest」に加え、淡路島の神秘的な大自然からインスピレーションを受けた最新作「Synapse」を展示する。
奈良氏の作品が、「禅坊 靖寧」やその建物を囲む淡路島の自然と、どのように共創するのかがみどころだ。
同展には以下の3つのフィロソフィーが存在するという。
1.現代建築とのセッション
奈良氏は、作品を取り巻く環境と渾然一体となった状態を重視する。環境を作品に対するノイズと捉えずに、空間とアートを等価に考えて展示構成を行う。建築家の坂茂(ばん しげる)氏が創った「禅坊 靖寧」に対して、奈良氏がどう応答するのかに注目だ。
2.陶と禅の親和性
心を静め、内省しながら高い境地を目指す「禅」。作陶の予期せぬ動きを繰り返す土に対して闘う行為は、無意識に入り込む行為だと奈良氏は常々言っているという。
雄大な自然の中、禅の体験施設での作陶が新たな智慧や示唆をもたらすことを強く願い、同展では初の試みとして、鑑賞者に空中禅道場にて作陶体験を提供する。
3.有機と無機
360度に広がる四季折々の景色、燦燦と降り注ぐ陽の光、澄んだ空気、雄大な緑、多種多様な生態系、夜空に輝く宇宙が、互いに連関を持ちながら共生する「禅坊 靖寧」。作品を鑑賞しながら、個人があらゆる事象と一体的に繋がっていくような感覚を味わうことができる。
淡路の自然に囲まれた空中禅道場「禅坊 靖寧」を舞台に
同展の開催場所である「禅坊 靖寧」は、建築界最高栄誉といわれる「プリツカー賞」を受賞した坂茂氏設計の、唯一無二の建築物だ。
注目したいのは淡路島の大自然を感じられる、全長100mのウッドデッキ。360度の全方位に広がる淡路島の絶景に溶け込みながらも、躍動感のあるダイナミックな建築デザインに仕上がっている。
展望デッキは、稜線を越えない高さに計算され、足を踏み入れると雄大な自然に包まれているような不思議な感覚を体感できる。また、風が抜ける展望デッキは様々な自然の音を楽しむことができる。