マンションブームはこれら古い住宅を持つ人が「駅近」「安全」「階段なし」「地震でも頑強」などを理由に転居促進が生まれました。当然、古い家は取り壊され、新たな息吹が生まれます。つまり不動産に回転力が生まれ、それが経済の活性化となるわけです。

タワマンも同様で一定の不動産の回転を生み、東京のみならず、地方にすら億ションを生みました。不動産は経済の中で最もパワフルな経済効果を生み出すツールです。6割の人が所有する不動産はウン千万円以上するわけで年間2%程度の値上がりだとすれば定期預金ですずめの涙程度の利息に比べたら圧倒的にパワフルであることは一目瞭然なのです。

ではタワマン投資は儲かるのか、といえば都心のごく限られた場所を除き、私はさほど強気になれません。2億円で買っても10年後に同額で売るのは一般的には苦労するはずです。理由は相続時の課税所得が小さいことが物語っています。マンションの場合、自分の土地は区分所有でその数%の所有であり、自分だけの特定の土地があるわけではありません。今は不動産が上がっているとされますが、その根源である土地の比率は小さいのです。つまり、不動産価値のほとんどは減価償却される建物部分にあり、かつその管理費、修繕積立金は高いのです。

よってタワマンは相続税対策では有効だけど実際の利益では場所によりけり、です。

海外の不動産を長年見ている限り、東京が向かうのは都心の不動産は投資家や外国人が所有し、一般的な勤労者層は郊外に押しやられるというシナリオです。NYでもロンドンでもトロントでもこれは同じで東京だけが2-30年遅れてしまっています。が、その流れは出来つつあるとみています。

国交省としては地震対策上、古い建物を新しくし、より安全で環境に適合した快適なまちづくりができます。官邸レベルでも海外からの投資を呼び込める上に土地の比率が少ないタワマンは安全保障上も都合がいいはずなのです。当然ながら財務省にも金は落ちます。国際金融都市東京を目指したいならこんな子供の小遣い稼ぎのような税の改変をしている場合ではなく、日本の富裕層を餌に海外マネーを釣り上げるぐらいの発想が欲しいと思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月29日の記事より転載させていただきました。