BMW330e・Mスポーツ 価格:750万円 試乗記

後期型3シリーズは各部をリファイン。330eはEV性能の高さが魅力
現行G20(21)型3シリーズは、2018年の登場以来、着実に販売台数を重ねてきた。世界で最も売れているプレミアムサルーンの1台だ。2022年に初めてビッグマイナーチェンジを実施。とはいえ主に内外装のアップグレードがメインで、パワートレーンは以前と大きくは変わらない。
新型はバンパーグリル周囲の立体感が増し、LEDヘッドライトはシャープに。リアランプはワイド感が強調された。
注目すべきは内装の変更だ。12.3インチのメーター画面と14.9インチのセンターモニターを一体化した巨大なカーブドディスプレイを採用する。BMW伝統の「ドライバーオリエンテッド」なコクピットの再定義だ。iドライブ回りの景色も変わって、大きなシフトレバーがとうとう廃された。代わりに小さなレバースイッチを設置し、指先でDやRに操作する。合わせて全車パドルシフト仕様に。

320d・xドライブ(2リッター直4ディーゼル/190㎰)、M340i・xドライブ(3リッター直6ターボ/384ps)の両4WDグレード、4気筒ガソリンPHEVの330e(2リッター直4+モーター/システム総合293ps)という日本仕様の上位3グレードが3シリーズの代表だろう。実際の売れ筋は318iや320iだったとしても、上位グレードが担うイメージリーダーとしての役割は大きい。
中でもPHEVの330eは、その「EV性能の高さ」で2020年のグレード追加以来、注目を集めている。といっても、前述したように今回のマイチェンでパワートレーンに大変更があったという情報はない。B48型の2リッター直4DOHCターボエンジンに電気モーター+リチウムイオンバッテリー(12.0kWh)を加えてシステム出力293ps、同トルク420Nmを発揮する。満充電時の電動航続距離は最大で56.5km(実際には50km前後)だ。


330eの特徴は、BEVとして走っている間もドライブフィールが通常の3シリーズとほとんど変わらない点にある。初期の3シリーズPHEVは、エンジン駆動時とモーター駆動時で、はっきりとテイストが異なっていた。だが最新版はリファインされた。それゆえ330eは、紛れもなく上等な3シリーズとして存在する。シャシーとサスペンション、ステアリング系統が成熟し、ドライバーと前輪が滑らかにつながっているという印象が強まった。いっそう正確に動かせるようになったうえで、静かで懐の深い乗り味を実現している。
ワインディングロードでは電動モーターの瞬発力を借りた走りを堪能した。バッテリーによる重量増をほとんど感じさせない。これ以上を望むとすれば6気筒の官能性くらいのもの。パワーがあるぶんアクセルコントロールで走らせやすい。とくにコーナーリング途中に強く感じるドライバーと前輪との絆がうれしい。電動時代が来てもBMWらしいサルーンのあり方は変わらないというブランドの矜持というものだろう。330eはドライバーオリエンティッドな電動スポーティサルーンである。

