エイズウイルスの強毒株が発見されました。

英国オックスフォード大学(UO)で行われた研究によれば、ウィルス量が多く、病気の進行速度が速い上に、感染力も強いエイズウイルスの変異株(VBバリアント)を発見した、とのこと。

分析によれば、この変異株を持つ30代の患者が適切な治療を怠った場合、エイズと診断されてから深刻な症状が出始める「進行したHIV」の状態に移行するまで、平均してわずか9カ月しか猶予がないことが示されました。

エイズウイルスの強毒化と拡散はいつ、どのようにして起きたのでしょうか?

研究内容の詳細は2月3日に『Science』にて公開されています。

目次

強毒化したエイズウイルス変異株を発見!
感染力も増加している
不十分な治療が変異の温床になっている可能性がある

強毒化したエイズウイルス変異株を発見!

強毒化したエイズウイルス変異株を発見! 早いと約9カ月で深刻化
(画像=強毒化したエイズウイルス変異株を発見! / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

エイズウイルスは体内の免疫細胞(T細胞)に感染して破壊することで、人間から免疫力を奪う危険な症状を引き起こします。

また新型コロナウイルスと同じRNAウイルスであるエイズウイルスは変異が起きやすいことが知られており、さまざまなバリエーションが存在します。

そこでオックスフォード大学の研究者たちは2014年から、エイズウイルスのわずかな遺伝子変異が病状に与える影響を調べるための、継続的な調査を行っていました。

すると奇妙なことに、特定の遺伝子パターンのエイズウイルスに感染した17人の患者において、ウイルス量が異常に多いことが判明します。

興味をもった研究者たちは、より包括的な分析を行うため、オランダで確認されたエイズ陽性者のデータを調べました。

結果、521人のうち92人が変異株に感染していることが判明します。

変異株に感染した患者は他の株に感染した患者よりも3.5倍から5.5倍高いウイルス量を持っており、免疫細胞(CD4:T細胞)が破壊される速度も2倍になっていました。

またエイズの症状が発症するまでの時間を比較したところ、適切な治療がなければ変異株に感染した患者は2~3年以内に症状を発症することが判明します。

特に変異株に感染した30代が治療しなかった場合、感染が判明してからわずか9カ月で血中の免疫細胞レベルが極度に低下した「進行したエイズ」に陥ることが示されました。

他の株に感染した患者は同様の症状に至るまで6~7年の時間がかかっていることから、変異株が強毒化していると研究者たちは結論しました。

問題は、いつどのようにしてエイズウイルスの強毒化が起きたかです。