つみたてNISAは、投資の利益に税金がかからない「少額投資非課税制度」の1つだ。少額から投資信託を購入できるので、低年収の人でも始めやすいだろう。銀行預金だけでお金を増やすのは難しいため、将来のためにまとまったお金を準備したいなら、つみたてNISAで投資を始めるのがおすすめだ。

今回は、つみたてNISAの概要や利用状況、2024年スタートの「新しいNISA(以下新NISA)」との違いについて解説する。

つみたてNISAとは
つみたてNISAとは、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度だ。

金融商品に投資して利益が出た場合、通常は約20%の税金がかかる。例えば、投資信託を売却して100万円の利益が出た場合、税金が約20万円かかるため、利益のうち手元に残るのは約80万円だ。

しかし、つみたてNISA口座で購入した投資信託は利益に税金がかからないので、利益100万円がそのまま手元に残る。

つみたてNISAの概要は以下の通りだ。

対象年齢 18歳以上
非課税対象 一定の投資信託から得られる譲渡益・分配金
非課税投資枠 年40万円まで
非課税期間 最長20年間
投資対象 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託

つみたてNISAは年40万円(月3万3,333円)まで投資可能で、最長20年間非課税で保有できる。仮に40万円投資して20年間運用した場合、利回り3%なら72万8,302円、利回り5%で運用できれば108万5,057円となる。

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現行つみたてNISAと2024年スタートの新NISAの違い

NISA制度の抜本的拡充・恒久化により、2024年からは新NISAがスタートする。現行つみたてNISAと新NISAの比較表は以下の通りだ。

つみたてNISA 新NISA
つみたて投資枠 成長投資枠
口座開設期間 2023年末まで 2024年1月~
(制度恒久化)
非課税保有期間 最長20年間 無期限
年間投資枠 40万円 120万円 240万円
非課税保有限度額 800万円 1,800万円
(内数として成長投資枠1,200万円)
※枠の再利用可能
投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した
一定の投資信託
つみたてNISAと同様 上場株式・投資信託など
(一部対象外あり)
制度選択 一般NISAとの併用不可 併用可

つみたてNISAの非課税保有期間は最長20年間だが、新NISAでは期限がなくなる。また、年間投資枠は年40万円から3倍の120万円に拡大される。つみたて投資枠(現行つみたてNISA)と成長投資枠(現行一般NISA)が併用可能になるため、最大で年360万円まで投資可能だ。

なお、2023年末までにつみたてNISAで購入した投資信託は、新NISAとは別枠で、最長20年間非課税で保有できる。2023年につみたてNISAを始めると、生涯のうちに非課税で投資できる金額を最大40万円増やせるのでお得だ。

新NISAはいつから始まる?どんな制度?現行NISAと比較して分かりやすく解説

つみたてNISAが低年収の人でも始めやすい理由 つみたてNISAが低年収の人でも始めやすい理由は以下の2つだ。

● 100円から投資を始められる
● 投資対象商品が長期の資産形成に適した投資信託に限定されている

つみたてNISAは、ネット証券なら100円から投資信託を購入できる。まとまったお金を用意する必要がないので、収入が低い人でも投資を始めやすいだろう。

また、投資対象商品が長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されているのもポイントだ。例えば、「販売手数料ゼロ(ノーロード)」「信託報酬が一定以下(国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)」のように、運用コストが低い商品が厳選されている。

2023年4月末現在、国内では5,900本の投資信託が販売されているが、つみたてNISA対象の投資信託は220本しかない(2023年5月26日現在、ETFを除く)。そのため、初心者でも長期投資に適した投資信託を選びやすいだろう。

つみたてNISAの利用状況
金融庁の「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」によると、2022年12月末(速報値)のつみたてNISA口座数は725万3,236口座だ。2021年12月末(確定値)に比べて207万131口座増えている。買付額は2兆8,206億8,411万円で、この1年間で1兆2,916億2,679万円の増加となった。

また、投資信託協会の「2022年度投資信託に関するアンケート調査報告書」によると、投資信託の保有口座について「つみたてNISA」と回答した人の割合は32.0%だ。投資信託を保有している人の3割弱はつみたてNISAで購入している。

年代別の割合は20代が65.6%、30代が55.5%、40代が39.5%だ。年代が若くなるにつれて、つみたてNISAで投資信託を保有する割合は高くなっている。

世帯年収別では、「100万円未満」が27.6%、「300万円未満」が24.5%となった。この結果から、年収が比較的低い世帯もつみたてNISAを利用していることがわかる。

新NISAになると低年収の人でもより投資を始めやすくなる?

新NISAは、低年収の人にとっても使い勝手が大幅に向上する。

非課税保有期間が無期限化されるため、資金が必要になるまで非課税で運用を続けられる。また、普段はつみたて投資枠で少額の積立投資を行い、ボーナスなどの臨時収入があったときは成長投資枠でスポット購入するといった使い方も可能だ。

まとめ

つみたてNISAは少額から投資できるので、収入が低い人でも始めやすいだろう。また、2023年末までにつみたてNISAで購入した投資信託は、2024年に新NISAがスタートした後も非課税で保有を続けられる。将来のためにまとまったお金を準備したいなら、まずはつみたてNISAを試してみてはどうだろうか。

執筆・大西勝士
AFP、金融ライター。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。FP資格や投資経験をもとに、大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。