同時に、軍リーダーたちに、その軍事的活動の改善を要求する一方、「軍隊は150万人に増やす。建設的な批判には注意を払うべきだ」と語っている。プーチン氏の演説は、ウクライナでの全ての軍事目標を達成するという強い意志を再確認したものと受け取られている。
なお、核兵器について、プーチン氏は演説の中で「私たちは、核トライアド(大陸間弾道ミサイル、弾道ミサイル搭載潜水艦、巡航ミサイル搭載戦略爆撃機の3つの核兵器)の戦闘準備を維持し、改善し続けている。それは、私たちの主権と領土の完全性、戦略的平等、そして世界の力の全体的なバランスが維持されるための主な保障だ」と述べている。
興味深い事実は、ゼレンスキー大統領の訪米とプーチン大統領の国防省での演説が同じ日に行われたことだ。多分、プーチン大統領はゼレンスキー大統領の訪米という極秘情報を入手し、米国側のパトリオット供与を聞き、ロシア側の決意をウクライナ、米国に向かって表明したのだろう。米国のパトリオット供与に対し、プーチン氏は無人機を駆使し、必要ならば核兵器の使用を示唆するなど、軍事分野でもウクライナと米国に対抗する姿勢を鮮明化したわけだ。
参考までに、プーチン氏は米国を含む西側がウクライナ問題で突っ込んだ対策をした時には必ずその前後に返答している。例えば、ドイツ南部バイエルン州のエルマウで6月26日から3日間の日程で先進7カ国首脳会談(G7サミット)が開催され、ウクライナ支援問題が協議された時だ。プーチン大統領は、ウクライナに武器を供給するG7を含む西側に対して答えている。
具体的には、6月25日、核搭載可能な弾道ミサイルのベラルーシへの供給を表明し、同月26日にはキーウ空爆を再開、27日にはウクライナ中部のショッピングモール空爆と、G7開催期間の3日間、ロシア軍は立て続けにウクライナ空爆を強化している。今回の国防省理事会拡大会議の内容もその流れからみれば明らかだ。
ゼレンスキー大統領の訪米とプーチン大統領の国防省での演説から、ウクライナ戦争はここしばらくは停戦の可能性は少なく、2023年の新年に入っても継続する可能性が一段と現実味を帯びてきた。ゼレンスキー大統領は「来年が転機となる」と語り、ロシア軍との戦いが大きな山場を迎えるだろうと予想している。
なお、プーチン大統領は戦局を打開するために新年早々にもベラルーシ軍とロシア軍の連携によるキーウ制圧を再度考えている、という憶測が流れている。プーチン大統領は12月19日、ベラルーシを訪問、ルカシェンコ大統領と会見し、両国の軍事協力の強化で一致している。
プーチン大統領もゼレンスキー大統領もウクライナ戦争の勝利を誓って決意表明しているが、一方が勝利すれば、他方は敗北を意味する。しかし、戦争で敗者は確かに存在するが、勝利者はいるのだろうか。

アメリカのホワイトハウス kanzilyou/iStock
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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