Netflixのオリジナルシリーズ「アフリカン・クイーンズ:クレオパトラ」で、主人公クレオパトラ役をアフリカ系のアデル・ジェームズが演じることにエジプトで大反発が起きて大騒ぎ。

アフリカン・クイーンズ:クレオパトラ 原題:Queen Cleopatra Netflix HPより
たしかに、クレオパトラはマケドニア系のプトレマイオス王朝の女性で、だいたい姉妹と近親結婚を繰り返してきたから、とんでもない話です。クレオパトラというと、映画ではシリア系の血を引くエリザベス・テイラーやインド人の血を少し引くヴィヴィアン・リーなど、ちょっとエキゾティックな雰囲気のある白人が演じることが多かったが、アフリカ系とは大胆。
もっとも、エジプト人は、言語ではセム系のアラブ語を話しますが、ハム語系の古代エジプト人の直接の子孫と考えられるので、アフリカ系でないにせよ、クレオパトラと同じ民族ではなさそうです。
そのあたりも含めて、本日は、「民族と国家の5000年史~文明の盛衰と戦略的思考がわかる」(扶桑社)から、少し、アレクサンドロス王その遺産であるヘレニズム文明の話を紹介する。
アテネ五輪の開会式でギリシャ選手団が入場するとき、場内アナウンスを聞いていたら、「ギリシャ」という言葉が出てこないので「あれっ」と思いました。そこで、改めて調べたら、英語ではグリース、フランス語でグレースですが、現代ギリシャ語ではエラス、古代ギリシャ語ではヘラースということを発見しました。
ギリシャという名はどこからきたのかというと、南蛮人たちがポルトガル語で「グレーシア」といったのを耳で聞いたままに書き写したものです。
ヘラスのほうは、「ヘレニズム文明」という使い方が日本でもおなじみで、ギリシャ神話の女神ヘレナが語源です。いまでこそ、古代ギリシャ人の末裔と威張っていますが、18世紀からの独立運動でも東ローマ帝国の再興をめざしコンスタンチノープルを首都にするつもりで、古代ギリシャ人のことは異教徒のヘラス人だとして軽蔑していたのです。
このヘレニズム時代というのは、アレクサンドロス大王による帝国の建設から、その後継諸国がローマによって征服されるまでの時期を指します。ギリシャの諸ポリスは、だいたい自治を保ちましたが、他の地域はペルシャ風の専制帝国に支配されました。しかし、ギリシャ文明の自由で科学的な精神は維持され、ローマに引き継がれたのです。
その意味では、ギリシャの特殊性を脱却し普遍化されたのがヘレニズム文明の時代ということができます。そして、その普遍性がゆえに、その後の世界にはかりしれない影響を及ぼすことになります。